ブンゴウメール公式ブログ

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【ブンゴウメール】山月記 (8/15)

(550字。目安の読了時間:2分) 己の中の人間の心がすっかり消えて了えば、恐らく、その方が、己はしあわせになれるだろう。 だのに、己の中の人間は、その事を、この上なく恐しく感じているのだ。 ああ、全く、どんなに、恐しく、哀しく、切なく思っている…

【ブンゴウメール】山月記 (7/15)

(476字。目安の読了時間:1分) その人間の心で、虎としての己の残虐な行のあとを見、己の運命をふりかえる時が、最も情なく、恐しく、憤ろしい。 しかし、その、人間にかえる数時間も、日を経るに従って次第に短くなって行く。 今までは、どうして虎などに…

【ブンゴウメール】山月記 (6/15)

(488字。目安の読了時間:1分) どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、自分は茫然とした。 そうして懼(おそ)れた。 全く、どんな事でも起り得るのだと思うて、深く懼れた。 しかし、何故こんな事になったのだろう。 分らぬ。 全く何事も我々には…

【ブンゴウメール】山月記 (5/15)

(489字。目安の読了時間:1分) 青年時代に親しかった者同志の、あの隔てのない語調で、それ等が語られた後、袁※(えんさん)は、李徴がどうして今の身となるに至ったかを訊(たず)ねた。 草中の声は次のように語った。 今から一年程前、自分が旅に出て汝…

【ブンゴウメール】山月記 (4/15)

(508字。目安の読了時間:2分) 袁※(えんさん)は恐怖を忘れ、馬から下りて叢に近づき、懐かしげに久闊を叙した。 そして、何故叢から出て来ないのかと問うた。 李徴の声が答えて言う。 自分は今や異類の身となっている。 どうして、おめおめと故人の前に…

【ブンゴウメール】山月記 (3/15)

(504字。目安の読了時間:2分) 袁※(えんさん)は、しかし、供廻りの多勢なのを恃み、駅吏の言葉を斥けて、出発した。 残月の光をたよりに林中の草地を通って行った時、果して一匹の猛虎が叢(くさむら)の中から躍り出た。 虎は、あわや袁※(えんさん)に…

【ブンゴウメール】山月記 (2/15)

(482字。目安の読了時間:1分) 曾ての同輩は既に遥(はる)か高位に進み、彼が昔、鈍物として歯牙にもかけなかったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年の儁才李徴の自尊心を如何に傷けたかは、想像に難くない。 彼は怏々(おうおう)として楽しま…