ブンゴウメール公式ブログ

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【ブンゴウメール】山月記 (15/15)

(479字。目安の読了時間:1分) そうして、附加えて言うことに、袁※(えんさん)が嶺南からの帰途には決してこの途を通らないで欲しい、その時には自分が酔っていて故人を認めずに襲いかかるかも知れないから。 又、今別れてから、前方百歩の所にある、あの…

【ブンゴウメール】山月記 (14/15)

(517字。目安の読了時間:2分) だが、お別れする前にもう一つ頼みがある。 それは我が妻子のことだ。 彼等は未だ※略(かくりゃく)にいる。 固より、己の運命に就いては知る筈(はず)がない。 君が南から帰ったら、己は既に死んだと彼等に告げて貰えない…

【ブンゴウメール】山月記 (13/15)

(448字。目安の読了時間:1分) 己の空費された過去は? 己は堪らなくなる。 そういう時、己は、向うの山の頂の巖(いわ)に上り、空谷に向って吼(ほ)える。 この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。 己は昨夕も、彼処で月に向って咆(ほ)えた。 誰か…

【ブンゴウメール】山月記 (12/15)

(460字。目安の読了時間:1分) 己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。 虎だったのだ。 これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。 今思えば、全く、己は、己の有っていた…

【ブンゴウメール】山月記 (11/15)

(473字。目安の読了時間:1分) 人間であった時、己は努めて人との交を避けた。 人々は己を倨傲だ、尊大だといった。 実は、それが殆(ほとん)ど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかった。 勿論、曾ての郷党の鬼才といわれた自分に、自尊心が無…

【ブンゴウメール】山月記 (10/15)

(468字。目安の読了時間:1分) 岩窟の中に横たわって見る夢にだよ。 嗤(わら)ってくれ。 詩人に成りそこなって虎になった哀れな男を。 (袁※(えんさん)は昔の青年李徴の自嘲癖を思出しながら、哀しく聞いていた。)そうだ。 お笑い草ついでに、今の懐…

【ブンゴウメール】山月記 (9/15)

(452字。目安の読了時間:1分) 作の巧拙は知らず、とにかく、産を破り心を狂わせてまで自分が生涯それに執着したところのものを、一部なりとも後代に伝えないでは、死んでも死に切れないのだ。 袁※(えんさん)は部下に命じ、筆を執って叢中の声に随って書…