ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」のブログです

2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

【ブンゴウメール】走れメロス (31/31)

(321字。目安の読了時間:1分)おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」 どっと群衆の間に、歓声が起…

【ブンゴウメール】走れメロス (30/31)

(322字。目安の読了時間:1分)殴ってから優しく微笑(ほほえ)み、「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁でき…

【ブンゴウメール】走れメロス (29/31)

(413字。目安の読了時間:1分)すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロ…

【ブンゴウメール】走れメロス (28/31)

(366字。目安の読了時間:1分)ついて来い! フィロストラトス。」「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、メロスは走っ…

【ブンゴウメール】走れメロス (27/31)

(359字。目安の読了時間:1分)「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかり…

ブンゴウメールの運用を、6月からちょっとだけ変更してみます

いつもブンゴウメールをご利用ありがとうございます。 いよいよ5月の配信も終わりが近づいてまいりました。メロスがちゃんと間に合うのかどきどきしてきましたね。 ここまで約1ヶ月運用してみて、いろいろご意見を頂いたり、反省するところもあったりしたの…

【ブンゴウメール】走れメロス (26/31)

(362字。目安の読了時間:1分)おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、シラ…

【ブンゴウメール】走れメロス (25/31)

(357字。目安の読了時間:1分)再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さ…

【ブンゴウメール】走れメロス (24/31)

(354字。目安の読了時間:1分)義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待…

【ブンゴウメール】走れメロス (23/31)

(361字。目安の読了時間:1分)それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉(かな)。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。 ふと耳に、潺々(せんせ…

【ブンゴウメール】走れメロス (22/31)

(364字。目安の読了時間:1分)おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く…

ブンゴウメールからメールを受信できないケースと対応方法について

ブンゴウメールに登録してもメールを受信できないケースについて、よくあるパターンと対応方法をご案内します。

【ブンゴウメール】走れメロス (21/31)

(362字。目安の読了時間:1分) いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。 いまだって、君は私を無心に待っているだろう。 ああ、待っているだろう。 ありがとう、セリヌンティウス。 よくも私を信じてくれた。 それを思えば、たま…

【超重要】メール配信システム移行のお知らせ

こんばんは、ブンゴウメール編集部です。今日はメール配信システムの変更に関する、とてもとても大事なお知らせをお送りします。今後メールが届かなくなる恐れがあるため、面倒ですがダイジェストだけでも必ずお読みいただきますよう、お願いいたします。■ダ…

【ブンゴウメール】走れメロス (20/31)

(357字。目安の読了時間:1分) 約束を破る心は、みじんも無かった。 神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。 動けなくなるまで走って来たのだ。 私は不信の徒では無い。 ああ、できる事なら私の胸を截(た)ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。 愛…

【ブンゴウメール】走れメロス (19/31)

(338字。目安の読了時間:1分) 立ち上る事が出来ぬのだ。 天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。 ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天(いだてん)、ここまで突破して来たメロスよ。 真の勇者、メロスよ。 今、ここで、疲れ切って動けな…

【ブンゴウメール】走れメロス (18/31)

(385字。目安の読了時間:1分) 持ちもの全部を置いて行け。」 「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」 「その、いのちが欲しいのだ。」 「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」 山…

【ブンゴウメール】走れメロス (17/31)

(329字。目安の読了時間:1分) 満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻(か)きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍(れんびん)を垂れてくれた。 押し流されつつも…

【ブンゴウメール】走れメロス (16/31)

(362字。目安の読了時間:1分)流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮(しず)めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時…

【ブンゴウメール】走れメロス (15/31)

(383字。目安の読了時間:1分) 妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。 私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。 まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。 そんなに急ぐ必要も無い。 ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気(のんき)さを取り返し、好…

【ブンゴウメール】走れメロス (14/31)

(376字。目安の読了時間:1分) メロスは、悠々と身仕度をはじめた。 雨も、いくぶん小降りになっている様子である。 身仕度は出来た。 さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。 私は、今宵、殺される。 殺される為に走るの…

【ブンゴウメール】走れメロス (13/31)

(346字。目安の読了時間:1分) 花嫁は、夢見心地で首肯(うなず)いた。 メロスは、それから花婿の肩をたたいて、 「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったこ…

【ブンゴウメール】走れメロス (12/31)

(363字。目安の読了時間:1分) ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。 その頃には、雨も小降りになっていよう。 少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。 メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。 今宵呆然…

【ブンゴウメール】走れメロス (11/31)

(367字。目安の読了時間:1分) 新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。 祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、…

【ブンゴウメール】走れメロス (10/31)

(371字。目安の読了時間:1分)さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」 メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてし…

【ブンゴウメール】走れメロス (9/31)

(406字。目安の読了時間:1分)セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。 メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌(あく)る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て…

【ブンゴウメール】走れメロス (8/31)

(373字。目安の読了時間:1分) 「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」 「なに、何をおっしゃる。…

【ブンゴウメール】走れメロス (7/31)

(408字。目安の読了時間:1分)「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてこ…

【ブンゴウメール】走れメロス (6/31)

(373字。目安の読了時間:1分)わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔(はりつけ)になってから、泣いて詫(わ)びたって聞かぬぞ。」「ああ、王は悧巧(りこう)だ。自惚(うぬぼ)れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる…

【ブンゴウメール】走れメロス (5/31)

(379字。目安の読了時間:1分)「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁(はんばく)した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」「疑うのが、正…