ブンゴウメール公式ブログ

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2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

よだかの星(9/9) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (581字。目安の読了時間:2分) 夜だかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。 もう山焼けの火はたばこの吸殻のくらいにしか見えません。 よだかはのぼってのぼって行きました。 寒さにいきはむねに白く凍りました…

よだかの星(8/9) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (615字。目安の読了時間:2分) 「北の青いお星さま、あなたの所へどうか私を連れてって下さい。」 大熊星はしずかに云いました。 「余計なことを考えるものではない。少し頭をひやして来なさい。そう云うときは、氷山の浮いている海の中へ…

よだかの星(7/9) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (634字。目安の読了時間:2分) 一本の若いすすきの葉から露がしたたったのでした。 もうすっかり夜になって、空は青ぐろく、一面の星がまたたいていました。 よだかはそらへ飛びあがりました。 今夜も山やけの火はまっかです。 よだかはそ…

よだかの星(6/9) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (600字。目安の読了時間:2分) みじかい夏の夜はもうあけかかっていました。 羊歯の葉は、よあけの霧を吸って、青くつめたくゆれました。 よだかは高くきしきしきしと鳴きました。 そして巣の中をきちんとかたづけ、きれいにからだ中のはね…

よだかの星(5/9) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (630字。目安の読了時間:2分) 泣きながらぐるぐるぐるぐる空をめぐったのです。 (ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つ…

よだかの星(4/9) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (598字。目安の読了時間:2分) それにああ、今度は市蔵だなんて、首へふだをかけるなんて、つらいはなしだなあ。) あたりは、もううすくらくなっていました。 夜だかは巣から飛び出しました。 雲が意地悪く光って、低くたれています。 夜…

よだかの星(3/9) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (653字。目安の読了時間:2分) 市蔵というんだ。市蔵とな。いい名だろう。そこで、名前を変えるには、改名の披露というものをしないといけない。いいか。それはな、首へ市蔵と書いたふだをぶらさげて、私は以来市蔵と申しますと、口上を云…

よだかの星(2/9) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (614字。目安の読了時間:2分) それによだかには、するどい爪もするどいくちばしもありませんでしたから、どんなに弱い鳥でも、よだかをこわがる筈はなかったのです。 それなら、たかという名のついたことは不思議なようですが、これは、一…

よだかの星(1/9) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (640字。目安の読了時間:2分) よだかは、実にみにくい鳥です。 顔は、ところどころ、味噌をつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。 足は、まるでよぼよぼで、一間とも歩けません。 ほかの鳥は、もう、よだか…

どんぐりと山猫(11/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (586字。目安の読了時間:2分) 一升にたりなかつたら、めつきのどんぐりもまぜてこい。はやく。」 別当は、さつきのどんぐりをますに入れて、はかつて叫びました。 「ちやうど一升あります。」 山ねこの陣羽織が風にばたばた鳴りました。 …

どんぐりと山猫(10/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (640字。目安の読了時間:2分) これほどのひどい裁判を、まるで一分半でかたづけてくださいました。どうかこれからわたしの裁判所の、名誉判事になつてください。これからも、葉書が行つたら、どうか来てくださいませんか。そのたびにお礼…

どんぐりと山猫(9/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (602字。目安の読了時間:2分) あたまのとがつたものが……。」がやがやがやがや。 山ねこが叫びました。 「やかましい。こゝをなんとこゝろえる。しづまれ、しづまれ。」 別当が、むちをひゆうぱちつと鳴らし、どんぐりはみんなしづまりまし…

どんぐりと山猫(8/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (600字。目安の読了時間:2分) 「さうでないよ。わたしのはうがよほど大きいと、きのふも判事さんがおつしやつたぢやないか。」 「だめだい、そんなこと。せいの高いのだよ。せいの高いことなんだよ。」 「押しつこのえらいひとだよ。押し…

どんぐりと山猫(7/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (628字。目安の読了時間:2分) やまねこは巻たばこを投げすてて、大いそぎで馬車別当にいひつけました。 馬車別当もたいへんあわてて、腰から大きな鎌をとりだして、ざつくざつくと、やまねこの前のとこの草を刈りました。 そこへ四方の草…

どんぐりと山猫(6/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (632字。目安の読了時間:2分) 「こんにちは、よくいらつしやいました。じつはをとゝひから、めんだうなあらそひがおこつて、ちよつと裁判にこまりましたので、あなたのお考へを、うかがひたいとおもひましたのです。まあ、ゆつくり、おや…

どんぐりと山猫(5/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (647字。目安の読了時間:2分) と言ひますと、男はよろこんで、息をはあはあして、耳のあたりまでまつ赤になり、きもののえりをひろげて、風をからだに入れながら、 「あの字もなかなかうまいか。」ときゝました。 一郎は、おもはず笑ひだ…

どんぐりと山猫(4/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (665字。目安の読了時間:2分) そこはうつくしい黄金いろの草地で、草は風にざわざわ鳴り、まはりは立派なオリーヴいろのかやの木のもりでかこまれてありました。 その草地のまん中に、せいの低いをかしな形の男が、膝を曲げて手に革鞭をも…

どんぐりと山猫(3/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (630字。目安の読了時間:2分) まあもすこし行つてみよう。きのこ、ありがたう。」 きのこはみんないそがしさうに、どつてこどつてこと、あのへんな楽隊をつづけました。 一郎はまたすこし行きました。 すると一本のくるみの木の梢を、栗鼠…

どんぐりと山猫(2/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (617字。目安の読了時間:2分) 栗の木はちよつとしづかになつて、 「やまねこなら、けさはやく、馬車でひがしの方へ飛んで行きましたよ。」と答へました。 「東ならぼくのいく方だねえ、をかしいな、とにかくもつといつてみよう。栗の木あ…

どんぐりと山猫(1/11) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (584字。目安の読了時間:2分) をかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。 かねた一郎さま 九月十九日 あなたは、ごきげんよろしいほで、けつこです。 あした、めんどなさいばんしますから、おいで んなさい。 とびど…

オツベルと象(10/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (589字。目安の読了時間:2分) 百姓どもは眼もくらみ、そこらをうろうろするだけだ。 そのうち外の象どもは、仲間のからだを台にして、いよいよ塀を越しかかる。 だんだんにゅうと顔を出す。 その皺くちゃで灰いろの、大きな顔を見あげたと…

オツベルと象(9/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (635字。目安の読了時間:2分) わざと力を減らしてあるんだ。ようし、もう五六本持って来い。さあ、大丈夫だ。大丈夫だとも。あわてるなったら。おい、みんな、こんどは門だ。門をしめろ。かんぬきをかえ。つっぱり。つっぱり。そうだ。お…

オツベルと象(8/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (638字。目安の読了時間:2分) 「オツベルをやっつけよう」議長の象が高く叫ぶと、 「おう、でかけよう。グララアガア、グララアガア。」みんながいちどに呼応する。 さあ、もうみんな、嵐のように林の中をなきぬけて、グララアガア、グラ…

オツベルと象(7/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (622字。目安の読了時間:2分) ある晩象は象小屋で、三把の藁をたべながら、十日の月を仰ぎ見て、 「苦しいです。サンタマリア。」と云ったということだ。 こいつを聞いたオツベルは、ことごと象につらくした。 ある晩、象は象小屋で、ふら…

オツベルと象(6/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (615字。目安の読了時間:2分) 晩方象は小屋に居て、八把の藁をたべながら、西の四日の月を見て 「ああ、せいせいした。サンタマリア」と斯うひとりごとしたそうだ。 その次の日だ、 「済まないが、税金が五倍になった、今日は少うし鍛冶場…

オツベルと象(5/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (591字。目安の読了時間:2分) 次の日、ブリキの大きな時計と、やくざな紙の靴とはやぶけ、象は鎖と分銅だけで、大よろこびであるいて居った。 「済まないが税金も高いから、今日はすこうし、川から水を汲んでくれ。」オツベルは両手をうし…

オツベルと象(4/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (638字。目安の読了時間:2分) 第二日曜 オツベルときたら大したもんだ。 それにこの前稲扱小屋で、うまく自分のものにした、象もじっさい大したもんだ。 力も二十馬力もある。 第一みかけがまっ白で、牙はぜんたいきれいな象牙でできてい…

オツベルと象(3/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (605字。目安の読了時間:2分) ところが何せ、器械はひどく廻っていて、籾は夕立か霰のように、パチパチ象にあたるのだ。 象はいかにもうるさいらしく、小さなその眼を細めていたが、またよく見ると、たしかに少しわらっていた。 オツベル…

オツベルと象(2/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (648字。目安の読了時間:2分) そいつは象のことだから、たぶんぶらっと森を出て、ただなにとなく来たのだろう。 そいつが小屋の入口に、ゆっくり顔を出したとき、百姓どもはぎょっとした。 なぜぎょっとした? よくきくねえ、何をしだすか…

オツベルと象(1/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (606字。目安の読了時間:2分) ……ある牛飼いがものがたる 第一日曜 オツベルときたら大したもんだ。 稲扱器械の六台も据えつけて、のんのんのんのんのんのんと、大そろしない音をたててやっている。 十六人の百姓どもが、顔をまるっきりま…