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2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

科学の不思議(30/30)

(606字。目安の読了時間:2分) 放つておけば、一寸の間に世界中に蔓(ひろが)るかもしれない此の木虱を、あの金色の眼の蜻蛉や、小さい瓢虫や、いろんな雛鳥が食ひ尽してしまへようか。『かうしていろんなガツ/\者共が食べ荒らすにも拘はらず、木虱は猶…

科学の不思議(29/30)

(880字。目安の読了時間:2分)木虱は、卵を産むといふ非常にのろいやり方をしないで、生きた木虱其者を産むのだ。どの木虱も皆んな、絶対的に皆んな、二週間程育つと、もう其の子を産み初めるのだ。それは木虱のゐる季節の間ずつと、云ひ換へれば、一年の…

科学の不思議(28/30)

(887字。目安の読了時間:2分)そして弱いものは其の絶滅の機会を免れようとして、殺されても猶いくらでも生んで行つて、遂にそれに打ち勝つのだ。ガツガツの大食家共がいくら八方から攻めて来たつて駄目だ。食はれる方はたつた一匹を保護するために、幾百…

科学の不思議(27/30)

(826字。目安の読了時間:2分)のろまな牝牛共は、その群がだん/\まばらになつて来て、恐ろしい事が近づいて来ると云ふ事も知らないのだ。捕まつた木虱は獅子の牙の間でもがいてゐる。他の者は何の出来事もないやうに呑気にたべつづけてゐる。『此の木虱…

科学の不思議(26/30)

(902字。目安の読了時間:2分)が、一匹が十匹になつて行けば、ほんの一寸の間で、其の数は勘定の出来ない位に殖える。坊さんの考へた小麦の粒を六十四度二倍したものは、地球全体を指の深さの小麦の床で覆ふようになるのだ。が、もしそれを二倍する代りに…

科学の不思議(25/30)

(839字。目安の読了時間:2分)』『僕、坊さんが其の金貨が千枚づつはいつた十の財布をことわつたと云ふのには一寸おどろきましたよ。だけども坊さんはそれよりはもつといゝものを待つてゐたんですね。十の財布はいつまでもそのまゝになつてはゐませんから…

科学の不思議(24/30)

(813字。目安の読了時間:2分)『計算は済みました。其の坊さんの要求を満足さしてやりますには、あなたの穀倉の中にある小麦だけでは足りません。町中にあるだけでも、国中にあるだけでも足りません。世界中のでも足りません。要求された量の小麦粒で、海…

科学の不思議(23/30)

(826字。目安の読了時間:2分)『ほんの一寸した事で結構でございます』と此の発明者は答へた。『貧乏な坊主を満足させるのはたやすい事でございます。何卒私に、小麦の粒を、将棋盤の最初の目には一つ、其の次の目には二つ、三番目の目には四つ、四番目の…

科学の不思議(22/30)

(845字。目安の読了時間:2分)一つのからなんか蟻が出て来ると道が真黒な位どつさりゐましたよ。あんなのは小さい虫をみんな育てるのに、よつぽど沢山の木虱がいりますね。』『それは大変なもんだよ。』と叔父さんはジユウルに話しました。『が蟻は決して…

科学の不思議(21/30)

(842字。目安の読了時間:2分)さうして此の蟻共は、そのはちきれさうなお腹が空になるまでわけてやるのだ。乳搾りの蟻はそれから又お腹を一杯にしに戻つて行く。『で、お前達は、自分で食べ物の処までゆけない労働者の蟻共が口一ぱいに食べ物をつめ込むの…

科学の不思議(20/30)

(829字。目安の読了時間:2分)誰でも他人の為めに働く前に先づ自分の元気をつけなくちやならない。しかし自分がたべるとすぐに、ほかの飢じい者の事を考へるのだ。人間の間では、何時もさうは行かない。人間は自分が御馳走をたべれば、他の者もみんなやは…

科学の不思議(19/30)

(878字。目安の読了時間:2分)それには、此の骨組みの上へ湿つた土の粒を一つ一つ堆み上げて行つて、木虱のゐるところまで円天井のやうなもので、茎を囲む。そして此の小舎に出はいりする為めの出入口をつくる。それで小舎は出来あがつたのだ。涼しく静か…

科学の不思議(18/30)

(846字。目安の読了時間:2分)神様は丁度人間に牝牛をあてがつて下すつたやうに、蟻には木虱をおあてがひになつたのですね。』『さうだ、ジヤツクや、』とポオル叔父さんは答へました。『それはみんな神様に対する私達の信仰を増させるのだ。神様の眼から…

科学の不思議(17/30)

(844字。目安の読了時間:2分)』とクレエルが叫びました。『不思議だねえ。だが、接骨木ばかりが蟻の牝牛共のゐる藪ではないんだよ。木虱は他のいろんな木にも見つける事が出来るのだ。キヤベツや薔薇の藪にたかつてゐる木虱は緑色をしてゐるし、接骨木や…

科学の不思議(16/30)

(873字。目安の読了時間:2分)木のやはらかい処や葉の裏には数へる事も出来ない位にびつしりくつつき合つて、真黒なびろうどのやうな虱(しらみ)がしつかりくつついてゐました。その虱は、毛よりも細い吸盤を皮の中に突込んで、少しも其の位置を変へずに…

科学の不思議(15/30)

(858字。目安の読了時間:2分)その蟻共は時々道で立ち止つて他の蟻とどう上つて行くかについて相談してゐるやうに見えます。そして又すぐに一層熱心に這ひ上つて行きます。降りて来る蟻達はゆつくりとした様子で小さな足どりで来ます。そして自分から足を…

科学の不思議(14/30)

(831字。目安の読了時間:2分)アンブロアジヌお婆あさんはしばらく糸車をまはしませんでした。又、ジヤツクお爺さんも柳を編むのをやめました。ジユウルもクレエルも眼を円くしました。みんなそれを冗談だと思つたのです。『いゝえ、坊や、私は冗談なんか…

科学の不思議(13/30)

(834字。目安の読了時間:2分)麦殻は地下の町の入口まで行つた。が、其の麦殻は今は簡単には穴の中にはいらないやうになつた。その麦殻はゆがんでゐる。穴の縁とは反対の方に傾いてゐるのだ。手伝ひ共は押し上げる。十ぺんも二十ぺんも一つ骨折りをやる。…

科学の不思議(12/30)

(846字。目安の読了時間:2分)『地面の下で坑道を掘りさへすれば、それで蟻の仕事はおしまひかと云ふと、決してさうではない。弱い処を固めて地辷りを防がなければならないし、柱で円天井を支へたり、仕切りもつくらねばならない。大勢の坑夫達は其の時に…

科学の不思議(11/30)

(867字。目安の読了時間:2分)蟻達は、途中で遊んだり、一寸の間でも仲間と立ち止まつて一緒に休むなどと云ふ事はないのだ。それどころか! 蟻達の仕事は大急ぎなのだ。そしてうんと働かなければならないのだ。どれもどれも大真面目で、着くと直ぐ土の粒を…

科学の不思議(10/30)

(837字。目安の読了時間:2分)アンブロアジヌお婆あさんの古いお話よりはずつと面白くて為めになるやうな話を持ち出すのに、みんなの話の向をかへるいゝ折が来たのです。『私は本当のお話を聞きたがつてゐるお前に賛成します。』と叔父さんが云ひました。…

科学の不思議(9/30)

(865字。目安の読了時間:2分)『さうぢやありませんよ、エミルさん、鼠の次ぎには鼠を食べる猫が来ます。それから猫を打つ掃木、それから掃木を焼く火、火を消す水、水を飲んで咽喉の渇くのを止める牝牛、牝牛をさす蠅、蠅をかつさらふ燕、その燕を捕へる…

科学の不思議(8/30)

(818字。目安の読了時間:2分)『私よりお太陽さんの方が強いよ、あいつは私を融かしてしまふからね。』『お太陽さんお太陽さん強い者は親切でなくつちやならないのにお前はいけないよ。お前は氷をとかすなんて。そして、お前と氷とでのあの可哀想な蟻の小…

科学の不思議(7/30)

(836字。目安の読了時間:2分)それだけ物事に注意をするやうになつて来たのです。此の世の中では、いゝ独楽より他にもつと面白い事が沢山ある事がわかり出して来たのです。ですから、何時かエミルが、お話を聞くためにおもちや箱の事は忘れてしまつたとい…

科学の不思議(6/30)

(852字。目安の読了時間:2分)そんな時には、ジユウルは叔父さんにきりのない質問を繰り返します。それは何故ですか? それはどう云ふんです?と云ふ風に。叔父さんは、ジユウルの此の好奇心を正しく導いて行きさへすれば、きつといゝ結果をあげる事が出来…

科学の不思議(5/30)

(861字。目安の読了時間:2分)叔父さんの家は又此のお爺さんお婆あさんの家でもあるのです。あなたにもジヤツクお爺さんとアムブロアジヌお婆あさんがどんなにその御主人を大事にしてゐるか、お分りでせう! ポオル叔父さんの為なら、二人は四ん這ひにでも…

科学の不思議(4/30)

(830字。目安の読了時間:2分) 何を調べてゐるのでせう? それは誰れにも分りません。しかし叔父さんのさういふ時の顔は、丁度神様の不思議な秘密を見出して、それと面と向き合つたやうに、気高い歓びに輝いて来るとみんなは云つてゐます。私達が本当に感…

科学の不思議(3/30)

(819字。目安の読了時間:2分)そして又、沢山のお父さんや、お母さんや、叔父さんや、叔母さんや、姉さんや、兄さん達が、此の本で、小さい人達の目にうつるいろんな謎を、どういふ風に片づけてやるべきものか、と云ふ事、またその事柄をも併せて学んで下…

科学の不思議(2/30)

(943字。目安の読了時間:2分)』 と叔父さんは此の本の最後でお約束をしてゐます。叔父さんはその約束どほりにまだ、いろんな話をしてゐます。それはやはりみんな本になつて出てゐます。が此の本の中に納められただけの一とくぎりの中に、どれ程多くの自然…

科学の不思議(1/30)

(804字。目安の読了時間:2分)訳者から ポオル叔父さんは、本当に驚く程物識りです。どんな不思議な事の説明でも、分りやすく面白くしてくれます。ポオル叔父さんの解いてくれる世の中の不思議な謎は、何と云ふ巧妙さで、そして無雑作に出来てゐるのでせう…