2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧
(729字。目安の読了時間:2分)第十五夜のリューネブルク、第二十五夜のフランクフルトには一八三三、四年に訪れている。一八三三年から三四年にかけてのイタリア旅行の印象は第十二夜、第十八夜、第二十夜などにあらわれている。なかでも、暗い北欧生れの…
(771字。目安の読了時間:2分)童話についても同様、『即興詩人』が出版されてから二、三カ月後にはじめて第一集が出、それから一八七五年八月四日に永眠するまでに百五、六十にも及ぶ多数の童話が書かれたのである。『絵のない絵本』は、一八三九年から四…
(844字。目安の読了時間:2分)しかし、十一歳のときに父を失うに及んで、この幸福の夢もはかなく消え去ってしまった。母は仕立屋の職人にしたいという希望を持っていたが、アンデルセンみずからは舞台に立つことを望んで、十四歳のときただひとり首都のコ…
(744字。目安の読了時間:2分)『あたし、お祈りしたのよ。パンにバターもたくさんつけてくださいまし、ってね!』」[#改ページ]解説矢崎源九郎 アンデルセンといえば、おそらくその名を知らない者はないといってもよいであろう。ことに童話詩人としての…
(757字。目安の読了時間:2分)そのため母親は、毎晩その子の寝床のそばにすわって、その子が『主の祈り』をとなえるのを聞いてやるのでした。そのあとで、その子はキスをしてもらうのです。そして母親はその子が眠りつくまで、そばにいてやります。でも小…
(824字。目安の読了時間:2分)―― しかし、ただきれぎれの音譜しか、わたしの光は照らすことができませんでした。その大部分は、わたしにとってはいつまでも暗闇の中に残されることでしょう。あの男の書いたのは死の讃歌だったのでしょうか? 喜びの歓声だ…
(753字。目安の読了時間:2分)『ぼくたち、兵隊ごっこちているだけよ!』 そこへ熊使いがやってきました」[#改ページ]第三十二夜 寒い風がぴゅうぴゅう吹いていました。雲が飛び去って行きました。月はただときおり見えるだけでした。「静かな大空をと…
(758字。目安の読了時間:2分)あの大きな、毛むくじゃらの熊ではありませんか! 熊は下の中庭に立っているのがたいくつになったのです。そして、階段を上る道を見つけたのでした。わたしはそれをのこらず見ていました!」と、月が言いました。「子供たちは…
(756字。目安の読了時間:2分)御者は道のりの半分以上もよく眠ってきたのに、――それはわたしがいちばんよく知っていますが――まだ手足をのばしていました。下男部屋への戸は開いていましたが、寝床はまるでひっくり返されたかと思われるようなありさまでし…
(817字。目安の読了時間:2分)そしてそれは、壁に打ちこまれた一本の木釘で、しっかりととめられています。その金めっきをした木は虫に食いあらされています。クモが王冠から棺まで網を張りめぐらしています。これは、人間の悲しみと同じように、はかない…
(757字。目安の読了時間:2分) 空高く野の白鳥の群れが飛んでいました。その中の一羽は翼の力がおとろえて、だんだん下へ沈んで行きました。その眼はしだいに遠ざかって行く空の旅行隊の後を追っていましたが、翼をひろくひろげて、ちょうどしゃぼん玉が静…
(805字。目安の読了時間:2分)この町のはずれの、平たい敷石をしいた屋根の上に――そこの欄干は瀬戸物でできているように見えます――白い大きな風鈴草をさした、きれいな花瓶が置いてありましたが、そのそばに美しいペーが、細いいたずらっぽい眼と、ふくよ…
(853字。目安の読了時間:2分)そしてどの仏の前にも――それはみんな錫(すず)でつくってあります――小さい祭壇があって、そこには聖い水と、花と、火のともっているろうそくとがありました。けれどもお寺の中のいちばん高いところには、最高の御仏である仏…
(808字。目安の読了時間:2分)』それは小さい煙突そうじの小僧でした。生れてはじめて煙突の中をてっぺんまでのぼってきて、頭を外につき出したのでした。『ばんざい!』そうです、そのとおりです。たしかにこれは、狭苦しい管や小さい煖炉の中を這(は)…
(776字。目安の読了時間:2分)この家の主人は帽子もかぶらず立っていて、この老婦人の手にうやうやしくキスをしました。 老婦人はこの人の母親だったのです。老婦人は息子と召使たちに親しげにうなずいてみせました。それから、人々は老婦人を狭い暗い小路…
(766字。目安の読了時間:2分)それは大きなマントにくるまった、背の高い、がっしりした男で、青い眼と長い白い髪の毛を持っていました。わたしはこの人を知っていました。そしてすぐさまわたしは、ナイルの群像やあらゆる大理石の神々のあるバチカン宮の…
(804字。目安の読了時間:2分)その巨大な神はスフィンクスに身をもたせて、まるで移り行く年月のことを考えてでもいるかのように、物思いにしずんで、夢みるように横たわっていました。小さい愛の神のアモールたちは、そのまわりでワニとたわむれていまし…
(797字。目安の読了時間:2分)そして紡車をながめました。それからすぐに、かわいらしい素足が一つ寝床から出てきました。またもう一つが出てきました。こうして小さな脚が二本現われました。コトリ! 男の子は床の上に立ちました。男の子はもう一度振り向…
(740字。目安の読了時間:2分)――やがて、角笛のひびきはだんだん弱くなっていきました。そしてそのたえだえの音を、尼僧院の鐘がかき消してしまいました。――」[#改ページ]第二十四夜 月が話したことを聞いてください。「いまからもう何年も前のことです…
(761字。目安の読了時間:2分)』そうして、いろいろと思いだしているうちに、『ああ、そうだっけ』と、女の子は言いました。『あたし、足に赤いきれをつけてた、かわいそうなアヒルを笑ったことがあったわ。あんなおかしなかっこうをして足をひきずるんで…
(796字。目安の読了時間:2分)それは、ほんとうにかわいい、きれいなお人形でした。もちろん、この世の中で不幸な目にあうように生れてきたわけではありません。ところが、この小さい女の子の兄さんの、大きい男の子たちがお人形をひったくって、庭の高い…
(762字。目安の読了時間:2分)この人たちは、人の通ったことのない道でも敵の種族に出会いませんでした。嵐も起りませんでした。旅行く人々を死にたやす砂柱も、この隊商の上にはまき起りませんでした。家では、美しい妻が夫や父のために祈っていました。…
(802字。目安の読了時間:2分)ゆるやかにのぼって行く雲の上に、月はまるく明るく輝いていました。月がわたしに話してくれたことをお聞きください。「アフリカのフェザン地方のある町から、わたしは隊商の後について行きました。砂漠の手前にある岩塩平原…
(759字。目安の読了時間:2分)そして下のほうに、わたしの輝く光をいっぱいに受けて、この小さい少女が出てきました。頭の上には水のはいった古代風の粘土のかめをのせていました。見ればはだしで、短いスカートも、小さいシュミーズの袖もきれていました…
(811字。目安の読了時間:2分)車を走らせている御者がただひとりそばにいるだけで、ほかにはだれもついていませんでした。月のほかにはだれも。墓地の塀の近くの片隅に、自殺者は埋められました。そこには、やがていらくさがはびこることでしょう。墓掘り…
(757字。目安の読了時間:2分)―― この芝居が終ったとき、わたしはひとりの男がマントにくるまって、階段をこっそり降りて行くのを見ました。それはほかならぬ、さんざんにやっつけられたその晩の騎士でした。道具方の男たちは、ひそひそ話しあっていました…
(787字。目安の読了時間:2分)かつては、この廊下には身分の高い貴族しか足を踏み入れることができなかったものです。 深い井戸からか、それとも溜息の橋のそばの牢獄からか、一つの溜息が聞えてきます。そのむかしには、色あざやかなゴンドラの上でタンバ…
(822字。目安の読了時間:2分)そこには魚が泳いでいて、黒いゴンドラが幽霊のように緑の水の上を走って行きます。わたしは」と、月はなおも語りつづけました。「きみにその都市の中でいちばん大きな広場を見せてあげましょう。そうすれば、きみはまるでお…