【ブンゴウメール】夢十夜 (4/29)
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自分が百合から顔を離す拍子(ひょうし)に思わず、遠い空を見た ら、暁(あかつき)の星がたった一つ瞬(またた)いていた。
「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。
第二夜
こんな夢を見た。
和尚(おしょう)の室を退(さ)がって、廊下(ろうか)伝(づた )いに自分の部屋へ帰ると行灯(あんどう)がぼんやり点(とも) っている。
片膝(かたひざ)を座蒲団(ざぶとん)の上に突いて、灯心を掻( か)き立てたとき、花のような丁子(ちょうじ)がぱたりと朱塗の 台に落ちた。
同時に部屋がぱっと明かるくなった。
襖(ふすま)の画(え)は蕪村(ぶそん)の筆である。
黒い柳を濃く薄く、遠近(おちこち)とかいて、寒(さ)むそうな 漁夫が笠(かさ)を傾(かたぶ)けて土手の上を通る。
床(とこ)には海中文殊(かいちゅうもんじゅ)の軸(じく)が懸 (かか)っている。
焚(た)き残した線香が暗い方でいまだに臭(にお)っている。
広い寺だから森閑(しんかん)として、人気(ひとけ)がない。
黒い天井(てんじょう)に差す丸行灯(まるあんどう)の丸い影が 、仰向(あおむ)く途端(とたん)に生きてるように見えた。
立膝(たてひざ)をしたまま、左の手で座蒲団(ざぶとん)を捲( めく)って、右を差し込んで見ると、思った所に、ちゃんとあった 。
あれば安心だから、蒲団をもとのごとく直(なお)して、その上に どっかり坐(すわ)った。
お前は侍(さむらい)である。
侍なら悟れぬはずはなかろうと和尚(おしょう)が云った。
そういつまでも悟れぬところをもって見ると、御前は侍ではあるま いと言った。
人間の屑(くず)じゃと言った。
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