ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」のブログです

【ブンゴウメール】夢十夜 (15/29)

(661字。目安の読了時間:2分)


女の髪は吹流しのように闇の中に尾を曳(ひ)いた。
それでもまだ篝(かがり)のある所まで来られない。


 すると真闇な道の傍で、たちまちこけこっこうという鶏の声がした 。
女は身を空様に、両手に握った手綱をうんと控えた。
馬は前足の蹄(ひづめ)を堅い岩の上に発矢と刻み込んだ。


 こけこっこうと鶏がまた一声鳴いた。


 女はあっと云って、緊めた手綱を一度に緩めた。
馬は諸膝を折る。
乗った人と共に真向へ前へのめった。
岩の下は深い淵(ふち)であった。


 蹄の跡はいまだに岩の上に残っている。
鶏の鳴く真似をしたものは天探女である。
この蹄の痕の岩に刻みつけられている間、天探女は自分の敵である 。

 

第六夜


 運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいると云う評判だから、散歩な がら行って見ると、自分より先にもう大勢集まって、しきりに下馬 評をやっていた。


 山門の前五六間の所には、大きな赤松があって、その幹が斜めに山 門の甍(いらか)を隠して、遠い青空まで伸びている。
松の緑と朱塗の門が互いに照り合ってみごとに見える。
その上松の位地が好い。
門の左の端を眼障にならないように、斜に切って行って、上になる ほど幅を広く屋根まで突出しているのが何となく古風である。
鎌倉時代とも思われる。


 ところが見ているものは、みんな自分と同じく、明治の人間である 。
その中でも車夫が一番多い。
辻待をして退屈だから立っているに相違ない。

============================== ================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/eiX6px

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo .gl/rgfoDv
■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomai l.notsobad.jp
■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog .notsobad.jp/entry/2018/05/03/ 145404
■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozo ra.gr.jp/cards/000148/files/ 799_14972.html

[PR] Facebookを使って、みんなに知られず婚活ができる神アプ リ!毎月4000人以上に恋人ができている実績あり。まずは試し てみて!
▼ ▽ ▼
https://goo.gl/kvdRBG