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【ブンゴウメール】夢十夜 (19/29)

(669字。目安の読了時間:2分)

 


「落ちて行く日を追かけるようだから」

 船の男はからからと笑った。
そうして向うの方へ行ってしまった。


「西へ行く日の、果は東か。それは本真か。東出る日の、御里は西 か。それも本真か。身は波の上。枕。流せ流せ」と囃(はや) している。
舳(へさき)へ行って見たら、水夫が大勢寄って、太い帆綱を手繰 っていた。


 自分は大変心細くなった。
いつ陸へ上がれる事か分らない。
そうしてどこへ行くのだか知れない。
ただ黒い煙を吐いて波を切って行く事だけはたしかである。
その波はすこぶる広いものであった。
際限もなく蒼(あお)く見える。
時には紫にもなった。
ただ船の動く周囲だけはいつでも真白に泡を吹いていた。
自分は大変心細かった。
こんな船にいるよりいっそ身を投げて死んでしまおうかと思った。


 乗合はたくさんいた。
たいていは異人のようであった。
しかしいろいろな顔をしていた。
空が曇って船が揺れた時、一人の女が欄に倚(よ)りかかって、し きりに泣いていた。
眼を拭く手巾の色が白く見えた。
しかし身体には更紗のような洋服を着ていた。
この女を見た時に、悲しいのは自分ばかりではないのだと気がつい た。


 ある晩甲板の上に出て、一人で星を眺めていたら、一人の異人が来 て、天文学を知ってるかと尋ねた。
自分はつまらないから死のうとさえ思っている。
天文学などを知る必要がない。
黙っていた。
するとその異人が金牛宮の頂にある七星の話をして聞かせた。

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