【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (7/30)
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町の屋根の上には、天幕がゆれていて、桜の簪(かんざし)を差した娘達がゾロゾロ歩いていた。
「ええ――ご当地へ参りましたのは初めてでござりますが、当商会はビンツケをもって蟇(がま)の膏薬かなんぞのようなまやかしものはお売り致しませぬ。ええ――おそれおおくも、××宮様お買い上げの光栄を有しますところの、当商会の薬品は、そこにもある、ここにもあると云う風なものとは違いまして……」
蟻(あり)のような人だかりの中に、父の声が非常に汗ばんで聞えた。
漁師の女が胎毒下しを買った。
桜の簪を差した娘が貝殻へはいった目薬を買った。
荷揚げの男が打ち身の膏薬を買った。
ピカピカ手ずれのした黒い鞄(かばん)の中から、まるで手品のように、色んな変った薬を出して、父は、輪をつくった群集の眼の前を近々と見せびらかして歩いた。
風琴は材木の上に転がっている。
子供達は、不思議な風琴の鍵(キイ)をいじくっていた。
ヴウ! ヴウ! この様に、時々風琴は、突拍子な音を立てて肩をゆする。
すると、子供達は豆のように弾けて笑った。
私は占領された風琴の音を聞くと、たまらなくなって、群集の足をかきわけた。
「ええ――子宮、血の道には、このオイチニイの薬ほど効くものはござりませぬ」
私は材木の上に群れた子供達を押しのけると、風琴を引き寄せて肩に掛けた。
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