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【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (7/30)

(608字。目安の読了時間:2分) 町の屋根の上には、天幕がゆれていて、桜の簪(かんざし)を差した娘達がゾロゾロ歩いていた。 「ええ――ご当地へ参りましたのは初めてでござりますが、当商会はビンツケをもって蟇(がま)の膏薬かなんぞのようなまやかしものはお売り致しませぬ。ええ――おそれおおくも、××宮様お買い上げの光栄を有しますところの、当商会の薬品は、そこにもある、ここにもあると云う風なものとは違いまして……」  蟻(あり)のような人だかりの中に、父の声が非常に汗ばんで聞えた。  漁師の女が胎毒下しを買った。 桜の簪を差した娘が貝殻へはいった目薬を買った。 荷揚げの男が打ち身の膏薬を買った。 ピカピカ手ずれのした黒い鞄(かばん)の中から、まるで手品のように、色んな変った薬を出して、父は、輪をつくった群集の眼の前を近々と見せびらかして歩いた。  風琴は材木の上に転がっている。  子供達は、不思議な風琴の鍵(キイ)をいじくっていた。 ヴウ! ヴウ! この様に、時々風琴は、突拍子な音を立てて肩をゆする。 すると、子供達は豆のように弾けて笑った。 私は占領された風琴の音を聞くと、たまらなくなって、群集の足をかきわけた。 「ええ――子宮、血の道には、このオイチニイの薬ほど効くものはござりませぬ」  私は材木の上に群れた子供達を押しのけると、風琴を引き寄せて肩に掛けた。 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/6ZxJiY ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/files/1814_24391.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail [PR] 今なら簡単に100円分のポイントがもらえるキャンペーン中!楽天公式アプリ ▼ ▽ ▼ https://goo.gl/sUtbi5 ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*