【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (8/30)
(586字。目安の読了時間:2分)
「ええ――子宮、血の道には、このオイチニイの薬ほど効くものはござりませぬ」
私は材木の上に群れた子供達を押しのけると、風琴を引き寄せて肩に掛けた。
「何しよっと! わしがとじゃけに……」
子供達は、断髪にしている私の男の子のような姿を見ると、
「散剪り、散剪り、男おなごやアい!」と囃(はや)したてた。
父は古ぼけた軍人帽子を、ちょいとなおして、振りかえって私を見た。
「邪魔しよっとじゃなか! 早よウおッ母さんのところへ、いんじょれ!」
父の眼が悲しげであった。
子供達は、また蠅(はえ)のように風琴のそばに群れて白い鍵(キイ)を押した。
私は材木の上を縄渡りのようにタッタッと走ると、どこかの町で見た曲芸の娘のような手振りで腰を揉(も)んだ。
「帯がとけとるどウ」
竹馬を肩にかついだ男の子が私を指差した。
「ほんま?」
私はほどけた帯を腹の上で結ぶと、裾を股にはさんで、キュッと後にまわして見せた。
男の子は笑っていた。
白壁の並んだ肥料倉庫の広場には針のように光った干魚が山のように盛り上げてあった。
その広場を囲んで、露店のうどん屋が鳥のように並んで、仲士達が立ったまま、つるつるとうどんを啜っていた。
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