【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (10/30)
(618字。目安の読了時間:2分)
「ぬくうなった、風がぬるぬるしよる」
「小便がしたか」
「かまうこたなか、そこへせいよ」
桟橋の下にはたくさん藻や塵芥(じんかい)が浮いていた。
その藻や塵芥の下を潜って影のような魚がヒラヒラ動いている。
帰って来た船が鳩(はと)のように胸をふくらませた。
その船の吃水線に潮が盛り上ると、空には薄い月が出た。
「馬の小便のごつある」
「ほんでも、長いこと、きばっとったとじゃもの」
私は、あんまり長い小便にあいそをつかしながら、うんと力んで自分の股間を覗いてみた。
白いプクプクした小山の向うに、空と船が逆さに写っていた。
私は首筋が痛くなるほど身を曲めた。
白い小山の向うから霧を散らした尿が、キラキラ光って桟橋をぬらしている。
「何しよるとじゃろ、墜ちたら知らんぞ、ほら、お父さんが戻って来よるが」
「ほんまか?」
「ほんまよ」
股間を心地よく海風が吹いた。
「くたびれなはったろう?」
母がこう叫ぶと、父は手拭で頭をふきながら、雁木の上の方から、私達を呼んだ。
「うどんでも食わんか?」
私は母の両手を握って振った。
「嬉しか! お父さん、山のごつ売ったとじゃろなア…………」
私達三人は、露店のバンコに腰をかけて、うどんを食べた。
私の丼の中には三角の油揚が這入っていた。
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