【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (11/30)
(565字。目安の読了時間:2分)
私の丼の中には三角の油揚が這入っていた。
「どうしてお父さんのも、おッ母さんのも、狐(きつね)がはいっとらんと?」
「やかましいか! 子供は黙って食うがまし……」
私は一片の油揚を父の丼の中へ投げ入れてニヤッと笑った。
父は甘美そうにそれを食った。
「珍しかとじゃろな、二三日泊って見たらどうかな」
「初め、癈兵じゃろう云いよったが、風琴を鳴らして、ハイカラじゃ云う者もあった」
「ほうな、勇ましか曲をひとつふたつ、聴かしてやるとよかったに……」
私は、残ったうどんの汁に、湯をゆらゆらついで長いこと乳のように吸った。
町には輪のように灯がついた。
市場が近いのか、頭の上に平たい桶(おけ)を乗せた魚売りの女達が、「ばんより! ばんよりはいりゃんせんか」と呼び売りしながら通って行く。
「こりゃ、まあ、面白かところじゃ、汽車で見たりゃ、寺がおそろしく多かったが、漁師も多かもん、薬も売れようたい」
「ほんに、おかしか」
父は、白い銭をたくさん数えて母に渡した。
「のう……章魚の足が食いたかア」
「また、あげんこツ! お父さんな、怒んなさって、風琴ば海さ捨てる云いなはるばい」
「また、何、ぐずっちょるとか!」
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