【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (12/30)
(541字。目安の読了時間:2分)
お父さんな、怒んなさって、風琴ば海さ捨てる云いなはるばい」
「また、何、ぐずっちょるとか!」
父は、豆手帳の背中から鉛筆を抜いて、薬箱の中と照し合せていた。
5 夜になると、夜桜を見る人で山の上は群った蛾(が)のように賑(にぎ)わった。
私達は、駅に近い線路ぎわのはたごに落ちついて、汗ばんだまま腹這っていた。
「こりゃもう、働きどうの多い町らしいぞ、桜を見ようとてお前、どこの町であぎゃん賑おうとったか?」
「狂人どうが、何が桜かの、たまげたものじゃ」
別に気も浮かぬと云った風に、風呂敷包みをときながら、母はフンと鼻で笑った。
「ほう、お前も立って、ここへ来てみいや、綺麗かぞ」
煤(すす)けた低い障子を開けて、父は汚れたメリヤスのパッチをぬぎながら、私を呼んだ。
「寿司ば食いとうなるけに、見とうはなか……」
私は立とうともしなかった。
母はクックッと笑っていた。
腫物のようにぶわぶわした畳の上に腹這って、母から読本を出してもらうと、私は大きい声を張りあげて、「ほごしょく」の一部を朗読し始めた。
母は、私が大きい声で、すらすらと本を読む事が、自慢ででもあるのであろう。
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