【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (19/30)
(556字。目安の読了時間:2分)
私はたまらなくなって、雨戸を開き、障子を開けた。
石榴の葉が、ツンツン豆の葉のように光って、山の上に盆のような朱い月が出ている。
肌の上を何かついと走った。
「どぎゃん、したかアい!」
思わず私は声をあげて下へ叫んでみた。
母が、鏡と洋燈を持っているのが見えた。
「ハイ! この縄を一生懸命握っとんなはい」
父はこうわめきながら、縄の先を、真中の石榴の幹へ結んでいた。
「いま、うちで、はいりますにな、辛抱して、縄へさばっといて下さいや」
おろおろした母の声も聞えた。
「まさこ! 降りてこいよッ」
父は覗いている私を見上げて呶鳴った。
私は寒いので、父の、黄色い筋のはいった服を背中にひっかけると、転げるように井戸端へ降りて行った。
縁側ではおじさんが「うはははははうはははははは」と、泡を食ったような声で呶鳴っていた。
「ええ子じゃけに、医者へ走って行け、おとなしう云うて来るんぞ」
石畳の上は、淡い燈のあかりでぬるぬる光っていた。
温い夜風が、皆の裾を吹いて行く。
井戸の中には、幾本も縄がさがって「ううん、ううん」唸(うな)り声が湧いていた。
「早よう行って来ぬか!
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