【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (20/30)
(544字。目安の読了時間:2分)
「早よう行って来ぬか! 何しよっとか?」
私は、見当もつかない夜更けの町へ出た。
波と風の音がして、町中、腥(なまぐさ)い臭いが流れていた。
小満の季節らしく、三味線の音のようなものが遠くから聞えて来る。
いつから、手を通していたのであろうか、首のところで、釦(ボタン)をとめて、私は父の道化た憲兵の服を着ていた。
そのためだろうか、街角の医者の家を叩くと、俥夫は寝呆けて私がいまだかつて、聞いた事がないほどな丁寧な物言いで、いんぎんに小腰を曲めた。
「よろしうござりますとも、一時でありましょうとも、二時でありましょうとも、医者の役目でござります故、私さえ走るならば、先生も起きましょうし、じき、上りまするでござります」
8 井戸へ墜ちたおばさんは、片手にびしょびしょの風呂敷包みを抱いて上って来た。
その黒い風呂敷包みの中には繻子の鯨帯と、おじさんが船乗り時代に買ったという、ラッコの毛皮の帽子がはいっていた。
おばさんは、夜更けを待って、裏口から質屋へ行く途中ででもあったのであろう。
おばさんの帯の間から質屋の通いがおちた。
母は「このひとも苦労しなはる」と、思ったのか、その通いを、医者の見ぬように隠した。
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