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【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (22/30)

(616字。目安の読了時間:2分) 「これへ乗って行きゃア、東京まで、沈黙っちょっても行けるんぞ」 「東京から、先の方は行けんか?」 「夷(えびす)の住んどるけに、女子供は行けぬ」 「東京から先は海か?」 「ハテ、お父さんも行ったこたなかよ」  随分、石段の多い学校であった。 父は石段の途中で何度も休んだ。 学校の庭は沙漠のように広かった。 四隅に花壇があって、ゆすらうめ、鉄線蓮、おんじ、薊(あざみ)、ルピナス、躑躅(つつじ)、いちはつ、などのようなものが植えてあった。  校舎の上には、山の背が見えた。 振り返ると、海が霞(かす)んで、近くに島がいくつも見えた。 「待っとれや」  父は、袴の結び紐(ひも)の上に手を組んで、教員室の白い門の中へはいって行った。 ――よっぽど柳には性のあった土地と見えて、この庭の真中にも、柔かい芽を出した大きい、柳の木が一本、羊のようにフラフラ背を揺っていた。  廻旋木にさわってみたり、遊動円木に乗ってみたり、私は新しい学校の匂いをかいだ。 だが、なぜか、うっとうしい気持ちがしていた。 このまま走って、石段を駈(か)け降りようかと、学校の門の外へ出たが、父が、「ヨオイ!」と私を呼んだので、私は水から上った鳥のように身震いして教員室の門をくぐった。  教員室には、二列になって、カナリヤの巣のような小さい本箱が並んでいた。 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/6ZxJiY ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/files/1814_24391.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail [PR] 今なら簡単に100円分のポイントがもらえるキャンペーン中!楽天公式アプリ ▼ ▽ ▼ https://goo.gl/sUtbi5 ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*