【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (21/30)
(562字。目安の読了時間:2分)
母は「このひとも苦労しなはる」と、思ったのか、その通いを、医者の見ぬように隠した。
「あぶないところであった」
「よかりましょうか?」
「打身をしとらぬから、血の道さえおこらねば、このままでよろしかろ」
一度は食べてみたいと思ったおばさんの、内職の昆布が、部屋の隅に散乱していた。
五ツ六ツ私は口に入れた。
山椒がヒリッと舌をさした。
「生きてあがったとじゃから、井戸浚えもせんでよかろ」
朝、その水で私達は口をガラガラ嗽(すす)いだ。
井戸の中には、おばさんの下駄が浮いていた。
私は禿(は)げた鏡を借りて来て、井戸の中を照らしながら、下駄を笊(ざる)で引きあげた。
母は、石囲いの四ツ角に、小さい盛塩をして「オンバラジャア、ユウセイソワカ」と掌を合しておがんだ。
曇り日で、雨らしい風が吹いている。
父は、着物の上から、下のおじさんの汚れた小倉の袴(はかま)をはいて、私を連れて、山の小学校へ行った。
小学校へ行く途中、神武天皇を祭った神社があった。
その神社の裏に陸橋があって、下を汽車が走っていた。
「これへ乗って行きゃア、東京まで、沈黙っちょっても行けるんぞ」
「東京から、先の方は行けんか?」
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