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【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (26/30)

(550字。目安の読了時間:2分)  父と母が、「大阪の方へ行ってみるか」と云う風な事をよく話しだした。 私は、大阪の方へ行きたくないと思った。 いつの間にか、父の憲兵服も無くなっていた。 だから風琴がなくなった時の事を考えると、私は胸に塩が埋ったようで悲しかった。 「俥でも引っぱってみるか?」  父が、腐り切ってこう云った。 その頃、私は好きな男の子があったので、なんぼうにもそれは恥ずかしい事であった。 その好きな男の子は、魚屋のせがれであった。 いつか、その魚屋の前を通っていたら、知りもしないのに、その子は私に呼びかけた。 「魚が、こぎゃん、えっと、えっと、釣れたんどう、一尾やろうか、何がええんな」 「ちぬご」 「ちぬごか、あぎゃんもんがええんか」  家の中は誰もいなかった。 男の子は鼻水をずるずる啜りながら、ちぬごを新聞で包んでくれた。 ちぬごは、まだぴちぴちして鱗が銀色に光っていた。 「何枚着とるんな」 「着物か?」 「うん」 「ぬくいけん何枚も着とらん」 「どら、衿を数えてみてやろ」  男の子は、腥い手で私の衿を数えた。 数え終ると、皮剥ぎと云う魚を指差して、「これも、えっとやろか」と云った。 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/6ZxJiY ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/files/1814_24391.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail [PR] 忙しいあなたも、耳は意外とヒマしてる!耳で読書できる便利アプリ。好みの一冊があるか、ぜひ調べてみよう! ▼ ▽ ▼ https://goo.gl/xL67HL ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*