【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (26/30)
(550字。目安の読了時間:2分)
父と母が、「大阪の方へ行ってみるか」と云う風な事をよく話しだした。
私は、大阪の方へ行きたくないと思った。
いつの間にか、父の憲兵服も無くなっていた。
だから風琴がなくなった時の事を考えると、私は胸に塩が埋ったようで悲しかった。
「俥でも引っぱってみるか?」
父が、腐り切ってこう云った。
その頃、私は好きな男の子があったので、なんぼうにもそれは恥ずかしい事であった。
その好きな男の子は、魚屋のせがれであった。
いつか、その魚屋の前を通っていたら、知りもしないのに、その子は私に呼びかけた。
「魚が、こぎゃん、えっと、えっと、釣れたんどう、一尾やろうか、何がええんな」
「ちぬご」
「ちぬごか、あぎゃんもんがええんか」
家の中は誰もいなかった。
男の子は鼻水をずるずる啜りながら、ちぬごを新聞で包んでくれた。
ちぬごは、まだぴちぴちして鱗が銀色に光っていた。
「何枚着とるんな」
「着物か?」
「うん」
「ぬくいけん何枚も着とらん」
「どら、衿を数えてみてやろ」
男の子は、腥い手で私の衿を数えた。
数え終ると、皮剥ぎと云う魚を指差して、「これも、えっとやろか」と云った。
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