【ブンゴウメール】断食芸人 (5/31)
(516字。目安の読了時間:2分)
芸人にとっては、格子のすぐ前に坐り、ホールのぼんやりした夜間照明では満足しないで、興行主が自由に使うようにと渡した懐中電燈で自分を照らすような見張りたちのほうがずっと好ましかった。
そのまばゆい光は彼にはまったく平気だった。
眠ることはおよそできないが、少しばかりまどろむことは、どんな照明の下でも、どんな時間にでも、また超満員のさわがしいホールにおいてでも、できたのだ。
彼にとっては、こうした見張り番たちといっしょに一睡もしないで夜を過ごすことは好むところだった。
こうした連中と冗談を言い合ったり、自分の放浪生活のいろいろな話を物語ったり、つぎに今度はむこうの物語を聞いたりする用意があった。
そうしたことはすべて、ただ彼らを目ざませておき、自分が何一つ食べものを檻のなかにもってはいないということ、彼らのうちのだれだってできないほど自分が断食をつづけているということを、彼らにくり返し見せてやることができるからだった。
しかし、彼がいちばん幸福なのは、やがて朝がきて、彼のほうの費用もちで見張り番たちにたっぷり朝食が運ばれ、骨の折れる徹夜のあとの健康な男たちらしい食欲で彼らがその朝食にかぶりつくときだった。
==============================================
ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! http://bit.ly/2R2326H
■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv
■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp
■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404
■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001235/files/49864_41927.html
■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail
==============================================
Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list:
*|UNSUB|*