【ブンゴウメール】断食芸人 (18/31)
(420字。目安の読了時間:1分)
いずれにしろ、ある日のこと、ちやほやされていた断食芸人は自分が楽しみを求める群集から見捨てられたのを知った。
群集は断食芸人よりもほかの見世物のほうへ流れていくのだった。
興行主はもう一度彼をつれてヨーロッパ半分を巡業して廻り、まだあちらこちらで昔のような関心がよみがえっているのではないか、と見ようとした。
すべてむなしかった。
こっそり申し合わせたようにどこでも断食の見世物を嫌う傾向がつくられてしまっていた。
むろん、ほんとうは突然そういうことになったのではない。
今おくればせながら、以前は成功の陶酔のなかで十分には気づかなかったが、しかし十分に抑えきれなかったいくつもの前兆のことが思い出された。
しかし、今それに抗するために何かを企てるといっても、すでに遅すぎた。
いつかは断食の全盛時代がふたたびくるだろう、ということは確実だったが、今生きている人びとにとってはそんなことはなんのなぐさめにもならなかった。
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