【ブンゴウメール】断食芸人 (21/31)
(503字。目安の読了時間:2分)
とはいえ、この主張は、断食芸人が熱中のあまり容易に忘れてしまっていた時代の風潮というものを考えあわせてみるならば、サーカスの専門家たちのあいだではただ薄笑いを招くだけではあった。
だが、根本においては断食芸人はほんとうの事情を見抜く眼を失ってしまったわけではなく、檻つきの彼を主要番組としてサーカスの舞台のまんなかには置かずに、外の動物小屋に近い、ともかく人のまったく近づきやすい場所に置いたことを、自明なこととして受け入れたのだった。
色とりどりに書かれた大きな文句が檻のまわりをふち取り、そこに見られるものを告げていた。
観客が上演の休憩時間に動物たちを見ようとして動物小屋に押しよせてくるとき、ほとんど避けられないことだが、人のむれは断食芸人のそばを通りすぎていきながら、ほんのちょっとそこに立ちどまるだけであった。
狭い通路にあとからあとからつめかける人びとが、いこうと思っている動物小屋への途中でなぜこうやって立ちどまるのかわからないまま、落ちついてもっと長くながめることを不可能にするのでなかったならば、おそらく人びとは断食芸人のところでもっと長くとまっていたことだろう。
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