【ブンゴウメール】断食芸人 (22/31)
(523字。目安の読了時間:2分)
狭い通路にあとからあとからつめかける人びとが、いこうと思っている動物小屋への途中でなぜこうやって立ちどまるのかわからないまま、落ちついてもっと長くながめることを不可能にするのでなかったならば、おそらく人びとは断食芸人のところでもっと長くとまっていたことだろう。
このことがまた、彼が自分の人生目的としてむろんくることを願っている見物時間のことを考えると、どうしても身ぶるいが出てくる理由でもあった。
はじめのころは休憩時間をほとんど待ちきれないくらいだった。
魅せられたようになって彼はつめかけてくる群集をながめていた。
ところがついに、あまりにも早く――どんなに頑強に、ほとんど意識的に自分をあざむこうとしても、こうした実際の経験には勝てなかった――たいていはそのほんとうの目的からいうと、いつでも、例外なく、ただ動物小屋へいく人びとだけなのだ、ということを確信しないわけにはいかなかった。
しかし、遠くから見るこうした光景は、やはりまだきわめてすばらしいものであった。
というのは、人びとが彼のところへやってくると、彼はたちまち、たえず変っていく二種類の人びとの叫び声やののしりの言葉のすさまじいさわぎに取り巻かれるのだった。
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