【ブンゴウメール】断食芸人 (27/31)
(445字。目安の読了時間:1分)
やりとげた断食日数を示す数字を書いた小さな黒板は、最初のうちは念入りに毎日書きあらためられていたのだったが、もうずっと前からいつでも同じものになっていた。
というのは、最初の一週間が過ぎると係員自身がこのつまらぬ仕事にあきてしまった。
そこで、断食芸人は以前夢見たように断食をつづけていき、苦もなくあの当時に予言したようにそれをうまくやりとげることができはしたのだが、だれも日数を数える者がなく、だれ一人として、また断食芸人自身も、もうどのくらいの成績を上げたものか、わからなかった。
そこで、彼の心はいよいよ重くなっていった。
そのころにいつかひまな人間が立ちどまり、古ぼけた数字をからかい、インチキ師というようなことをいったが、それはこういう意味ではたしかに、冷淡さと生まれつきの性悪さとが発見するもっとも愚かしいいつわりであった。
というのは、断食芸人はあざむいたりせず、正直に働いていたのだが、世間のほうが彼をあざむいて彼の当然もらうべき報酬を奪ってしまったのだった。
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