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【ブンゴウメール】断食芸人 (29/31)

(472字。目安の読了時間:1分) 耳を格子にあてていた監督だけが、芸人のいうことがわかった。 「いいとも」と、監督はいって、指を額に当て、それによって断食芸人の状態を係員たちにほのめかした。 少し頭にきている、というしぐさだ。 「許してやるともさ」 「いつもおれは、みんながおれの断食に感心することを望んでいたんだ」と、断食芸人はいった。 「みんな、感心しているよ」と、監督は芸人の意を迎えるような調子でいった。 「でも、みんなは感心してはいけないんだ」と、断食芸人はいった。 「そうか、それなら感心しないよ」と、監督はいった。 「なぜ感心してはいけないんだね?」 「おれは断食しないではいられないだけの話だからだ。ほかのことはおれにはできないのだ」 「まあ、そういうなよ」と、監督はいった。 「なぜほかのことはできないのだね?」 「それはな、おれが」と、断食芸人はいって、小さな頭を少しばかりもたげ、まるで接吻するように唇をとがらして、ひとことでももれてしまわないように監督のすぐ耳もとでささやいた。 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! http://bit.ly/2R2326H ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001235/files/49864_41927.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*