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【ブンゴウメール】山月記 (1/15)

(504字。目安の読了時間:2分)



 隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃(たの)むところ頗(すこぶ)る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。
いくばくもなく官を退いた後は、故山、※略(かくりゃく)に帰臥し、人と交を絶って、ひたすら詩作に耽(ふけ)った。
下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺そうとしたのである。
しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。
李徴は漸く焦躁に駆られて来た。
この頃からその容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみ徒らに炯々(けいけい)として、曾(かつ)て進士に登第した頃の豊頬の美少年の俤(おもかげ)は、何処に求めようもない。
数年の後、貧窮に堪えず、妻子の衣食のために遂に節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになった。
一方、これは、己の詩業に半ば絶望したためでもある。
曾ての同輩は既に遥(はる)か高位に進み、彼が昔、鈍物として歯牙にもかけなかったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年の儁才李徴の自尊心を如何に傷けたかは、想像に難くない。

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【お知らせ】
2本立てでお送りする11月のブンゴウメール、後半は引き続き中島敦で『山月記』です。
教科書などで既読の方も多いと思いますが、久しぶりの再読にぜひどうぞ。

ちなみに前半でお送りした『文字禍』とこの『山月記』は、当初『古譚』の名で合わせて発表され、中島敦のデビュー作となったそうです。

なお本作にはシステムで表示できない外字がいくつか含まれているため、「※」で代替表記しています。青空文庫本体では画像化した漢字を表示しているので、気になる方はそちらでご確認ください。

それでは、後半もお楽しみください!

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