【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (11/11)
(671字。目安の読了時間:2分)
不思議なことに、赤い蝋燭が、山のお宮に点った晩は、どんなに天気がよくても忽(たちま)ち大あらしになりました。
それから、赤い蝋燭は、不吉ということになりました。
蝋燭屋の年より夫婦は、神様の罰が当ったのだといって、それぎり蝋燭屋をやめてしまいました。
しかし、何処からともなく、誰が、お宮に上げるものか、毎晩、赤い蝋燭が点りました。
昔は、このお宮にあがった絵の描いた蝋燭の燃えさしを持ってさえいれば、決して海の上では災難に罹(かか)らなかったものが、今度は、赤い蝋燭を見ただけでも、その者はきっと災難に罹って、海に溺れて死んだのであります。
忽ち、この噂が世間に伝わると、もはや誰も、山の上のお宮に参詣する者がなくなりました。
こうして、昔、あらたかであった神様は、今は、町の鬼門となってしまいました。
そして、こんなお宮が、この町になければいいのにと怨まぬものはなかったのであります。
船乗りは、沖から、お宮のある山を眺めて怖れました。
夜になると、北の海の上は永に物凄うございました。
はてしもなく、何方を見まわしても高い波がうねうねとうねっています。
そして、岩に砕けては、白い泡が立ち上っています。
月が雲間から洩れて波の面を照らした時は、まことに気味悪うございました。
真暗な、星も見えない、雨の降る晩に、波の上から、蝋燭の光りが、漂って、だんだん高く登って、山の上のお宮をさして、ちらちらと動いて行くのを見た者があります。
幾年も経たずして、その下の町は亡びて、失なってしまいました。
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