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桜の森の満開の下(19/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(644字。目安の読了時間:2分)

 娘の首のために、一人の若い貴公子の首が必要でした。

貴公子の首も念入りにお化粧され、二人の若者の首は燃え狂うような恋の遊びにふけります。

すねたり、怒ったり、憎んだり、嘘をついたり、だましたり、悲しい顔をしてみせたり、けれども二人の情熱が一度に燃えあがるときは一人の火がめいめい他の一人を焼きこがしてどっちも焼かれて舞いあがる火焔になって燃えまじりました。

けれども間もなく悪侍だの色好みの大人だの悪僧だの汚い首が邪魔にでて、貴公子の首は蹴られて打たれたあげくに殺されて、右から左から前から後から汚い首がゴチャゴチャ娘に挑みかかって、娘の首には汚い首の腐った肉がへばりつき、牙のような歯に食いつかれ、鼻の先が欠けたり、毛がむしられたりします。

すると女は娘の首を針でつついて穴をあけ、小刀で切ったり、えぐったり、誰の首よりも汚らしい目も当てられない首にして投げだすのでした。

 男は都を嫌いました。

都の珍らしさも馴れてしまうと、なじめない気持ばかりが残りました。

彼も都では人並に水干を着ても脛をだして歩いていました。

白昼は刀をさすことも出来ません。

市へ買物に行かなければなりませんし、白首のいる居酒屋で酒をのんでも金を払わねばなりません。

市の商人は彼をなぶりました。

野菜をつんで売りにくる田舎女も子供までなぶりました。

白首も彼を笑いました。

都では貴族は牛車で道のまんなかを通ります。

水干をきた跣足の家来はたいがいふるまい酒に顔を赤くして威張りちらして歩いて行きました。

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