桜の森の満開の下(21/30) - ブンゴウメール
ブンゴウメール
(609字。目安の読了時間:2分)
きっと退屈を忘れるから」
「何を」
「何でも喋りたいことをさ」
「喋りたいことなんかあるものか」
男はいまいましがってアクビをしました。
都にも山がありました。
然し、山の上には寺があったり庵があったり、そして、そこには却って多くの人の往来がありました。
山から都が一目に見えます。
なんというたくさんの家だろう。
そして、なんという汚い眺めだろう、と思いました。
彼は毎晩人を殺していることを昼は殆ど忘れていました。
なぜなら彼は人を殺すことにも退屈しているからでした。
何も興味はありません。
刀で叩くと首がポロリと落ちているだけでした。
首はやわらかいものでした。
骨の手応えはまったく感じることがないもので、大根を斬るのと同じようなものでした。
その首の重さの方が彼には余程意外でした。
彼には女の気持が分るような気がしました。
鐘つき堂では一人の坊主がヤケになって鐘をついています。
何というバカげたことをやるのだろうと彼は思いました。
何をやりだすか分りません。
こういう奴等と顔を見合って暮すとしたら、俺でも奴等を首にして一緒に暮すことを選ぶだろうさ、と思うのでした。
けれども彼は女の欲望にキリがないので、そのことにも退屈していたのでした。
女の欲望は、いわば常にキリもなく空を直線に飛びつづけている鳥のようなものでした。
休むひまなく常に直線に飛びつづけているのです。
その鳥は疲れません。
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