オツベルと象(10/10) - ブンゴウメール
ブンゴウメール
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百姓どもは眼もくらみ、そこらをうろうろするだけだ。
そのうち外の象どもは、仲間のからだを台にして、いよいよ塀を越しかかる。
だんだんにゅうと顔を出す。
その皺くちゃで灰いろの、大きな顔を見あげたとき、オツベルの犬は気絶した。
さあ、オツベルは射ちだした。
六連発のピストルさ。
ドーン、グララアガア、ドーン、グララアガア、ドーン、グララアガア、ところが弾丸は通らない。
牙にあたればはねかえる。
一疋なぞは斯う言った。
「なかなかこいつはうるさいねえ。ぱちぱち顔へあたるんだ。」
オツベルはいつかどこかで、こんな文句をきいたようだと思いながら、ケースを帯からつめかえた。
そのうち、象の片脚が、塀からこっちへはみ出した。
それからも一つはみ出した。
五匹の象が一ぺんに、塀からどっと落ちて来た。
オツベルはケースを握ったまま、もうくしゃくしゃに潰れていた。
早くも門があいていて、グララアガア、グララアガア、象がどしどしなだれ込む。
「牢はどこだ。」みんなは小屋に押し寄せる。
丸太なんぞは、マッチのようにへし折られ、あの白象は大へん瘠せて小屋を出た。
「まあ、よかったねやせたねえ。」みんなはしずかにそばにより、鎖と銅をはずしてやった。
「ああ、ありがとう。ほんとにぼくは助かったよ。」白象はさびしくわらってそう云った。
おや〔一字不明〕、川へはいっちゃいけないったら。
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