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オツベルと象(10/10) - ブンゴウメール

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(589字。目安の読了時間:2分)

百姓どもは眼もくらみ、そこらをうろうろするだけだ。

そのうち外の象どもは、仲間のからだを台にして、いよいよ塀を越しかかる。

だんだんにゅうと顔を出す。

その皺くちゃで灰いろの、大きな顔を見あげたとき、オツベルの犬は気絶した。

さあ、オツベルは射ちだした。

六連発のピストルさ。

ドーン、グララアガア、ドーン、グララアガア、ドーン、グララアガア、ところが弾丸は通らない。

牙にあたればはねかえる。

一疋なぞは斯う言った。

「なかなかこいつはうるさいねえ。ぱちぱち顔へあたるんだ。」

 オツベルはいつかどこかで、こんな文句をきいたようだと思いながら、ケースを帯からつめかえた。

そのうち、象の片脚が、塀からこっちへはみ出した。

それからも一つはみ出した。

五匹の象が一ぺんに、塀からどっと落ちて来た。

オツベルはケースを握ったまま、もうくしゃくしゃに潰れていた。

早くも門があいていて、グララアガア、グララアガア、象がどしどしなだれ込む。

「牢はどこだ。」みんなは小屋に押し寄せる。

丸太なんぞは、マッチのようにへし折られ、あの白象は大へん瘠せて小屋を出た。

「まあ、よかったねやせたねえ。」みんなはしずかにそばにより、鎖と銅をはずしてやった。

「ああ、ありがとう。ほんとにぼくは助かったよ。」白象はさびしくわらってそう云った。

 おや〔一字不明〕、川へはいっちゃいけないったら。

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