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どんぐりと山猫(5/11) - ブンゴウメール

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(647字。目安の読了時間:2分)

と言ひますと、男はよろこんで、息をはあはあして、耳のあたりまでまつ赤になり、きもののえりをひろげて、風をからだに入れながら、

「あの字もなかなかうまいか。」ときゝました。

一郎は、おもはず笑ひだしながら、へんじしました。

「うまいですね。五年生だつてあのくらゐには書けないでせう。」

 すると男は、急にまたいやな顔をしました。

「五年生つていふのは、尋常五年生だべ。」その声が、あんまり力なくあはれに聞えましたので、一郎はあわてて言ひました。

「いゝえ、大学校の五年生ですよ。」

 すると、男はまたよろこんで、まるで、顔ぢゆう口のやうにして、にたにたにたにた笑つて叫びました。

「あのはがきはわしが書いたのだよ。」

 一郎はをかしいのをこらへて、

「ぜんたいあなたはなにですか。」とたづねますと、男は急にまじめになつて、

「わしは山ねこさまの馬車別当だよ。」と言ひました。

 そのとき、風がどうと吹いてきて、草はいちめん波だち、別当は、急にていねいなおじぎをしました。

 一郎はをかしいとおもつて、ふりかへつて見ますと、そこに山猫が、黄いろな陣羽織のやうなものを着て、緑いろの眼をまん円にして立つてゐました。

やつぱり山猫の耳は、立つて尖つてゐるなと、一郎がおもひましたら、山ねこはぴよこつとおじぎをしました。

一郎もていねいに挨拶しました。

「いや、こんにちは、きのふははがきをありがたう。」

 山猫はひげをぴんとひつぱつて、腹をつき出して言ひました。

「こんにちは、よくいらつしやいました。

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