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どんぐりと山猫(10/11) - ブンゴウメール

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(640字。目安の読了時間:2分)

これほどのひどい裁判を、まるで一分半でかたづけてくださいました。どうかこれからわたしの裁判所の、名誉判事になつてください。これからも、葉書が行つたら、どうか来てくださいませんか。そのたびにお礼はいたします。」

「承知しました。お礼なんかいりませんよ。」

「いゝえ、お礼はどうかとつてください。わたしのじんかくにかゝはりますから。そしてこれからは、葉書にかねた一郎どのと書いて、こちらを裁判所としますが、ようございますか。」

 一郎が「えゝ、かまひません。」と申しますと、やまねこはまだなにか言ひたさうに、しばらくひげをひねつて、眼をぱちぱちさせてゐましたが、たうとう決心したらしく言ひ出しました。

「それから、はがきの文句ですが、これからは、用事これありに付き、明日出頭すべしと書いてどうでせう。」

 一郎はわらつて言ひました。

「さあ、なんだか変ですね。そいつだけはやめた方がいゝでせう。」

 山猫は、どうも言ひやうがまづかつた、いかにも残念だといふふうに、しばらくひげをひねつたまゝ、下を向いてゐましたが、やつとあきらめて言ひました。

「それでは、文句はいままでのとほりにしませう。そこで今日のお礼ですが、あなたは黄金のどんぐり一升と、塩鮭のあたまと、どつちをおすきですか。」

「黄金のどんぐりがすきです。」

 山猫は、鮭の頭でなくて、まあよかつたといふやうに、口早に馬車別当に云ひました。

「どんぐりを一升早くもつてこい。一升にたりなかつたら、めつきのどんぐりもまぜてこい。

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