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どんぐりと山猫(11/11) - ブンゴウメール

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(586字。目安の読了時間:2分)

一升にたりなかつたら、めつきのどんぐりもまぜてこい。はやく。」

 別当は、さつきのどんぐりをますに入れて、はかつて叫びました。

「ちやうど一升あります。」

 山ねこの陣羽織が風にばたばた鳴りました。

そこで山ねこは、大きく延びあがつて、めをつぶつて、半分あくびをしながら言ひました。

「よし、はやく馬車のしたくをしろ。」白い大きなきのこでこしらへた馬車が、ひつぱりだされました。

そしてなんだかねずみいろの、をかしな形の馬がついてゐます。

「さあ、おうちへお送りいたしませう。」山猫が言ひました。

二人は馬車にのり別当は、どんぐりのますを馬車のなかに入れました。

 ひゆう、ぱちつ。

 馬車は草地をはなれました。

木や藪がけむりのやうにぐらぐらゆれました。

一郎は黄金のどんぐりを見、やまねこはとぼけたかほつきで、遠くをみてゐました。

 馬車が進むにしたがつて、どんぐりはだんだん光がうすくなつて、まもなく馬車がとまつたときは、あたりまへの茶いろのどんぐりに変つてゐました。

そして、山ねこの黄いろな陣羽織も、別当も、きのこの馬車も、一度に見えなくなつて、一郎はじぶんのうちの前に、どんぐりを入れたますを持つて立つてゐました。

 それからあと、山ねこ拝といふはがきは、もうきませんでした。

やつぱり、出頭すべしと書いてもいゝと言へばよかつたと、一郎はときどき思ふのです。

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