老妓抄(21/30) - ブンゴウメール
ブンゴウメール
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蒔田の狭い二階で、注文先からの設計の予算表を造っていると、子供が代る代る来て、頸筋が赤く腫れるほど取りついた。
小さい口から嘗めかけの飴玉を取出して、涎の糸をひいたまま自分の口に押し込んだりした。
彼は自分は発明なんて大それたことより、普通の生活が欲しいのではないかと考え始めたりした。
ふと、みち子のことが頭に上った。
老妓は高いところから何も知らない顔をして、鷹揚に見ているが、実は出来ることなら自分をみち子の婿にでもして、ゆくゆく老後の面倒でも見て貰おうとの腹であるのかも知れない。
だがまたそうとばかり判断も仕切れない。
あの気嵩な老妓がそんなしみったれた計画で、ひとに好意をするのではないことも判る。
みち子を考える時、形式だけは十二分に整っていて、中身は実が入らずじまいになった娘、柚木はみなし茹で栗の水っぽくぺちゃぺちゃな中身を聯想して苦笑したが、この頃みち子が自分に憎みのようなものや、反感を持ちながら、妙に粘って来る態度が心にとまった。
彼女のこの頃の来方は気紛れでなく、一日か二日置き位な定期的なものになった。
みち子は裏口から入って来た。
彼女は茶の間の四畳半と工房が座敷の中に仕切って拵えてある十二畳の客座敷との襖を開けると、そこの敷居の上に立った。
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