老妓抄(26/30) - ブンゴウメール
ブンゴウメール
(547字。目安の読了時間:2分)
「そのもしやもだね」
本当に性が合って、心の底から惚れ合うというのなら、それは自分も大賛成なのである。
「けれども、もし、お互いが切れっぱしだけの惚れ合い方で、ただ何かの拍子で出来合うということでもあるなら、そんなことは世間にいくらもあるし、つまらない。必ずしもみち子を相手取るにも当るまい。私自身も永い一生そんなことばかりで苦労して来た。それなら何度やっても同じことなのだ」
仕事であれ、男女の間柄であれ、混り気のない没頭した一途な姿を見たいと思う。
私はそういうものを身近に見て、素直に死にたいと思う。
「何も急いだり、焦ったりすることはいらないから、仕事なり恋なり、無駄をせず、一揆で心残りないものを射止めて欲しい」と云った。
柚木は「そんな純粋なことは今どき出来もしなけりゃ、在るものでもない」と磊落に笑った。
老妓も笑って
「いつの時代だって、心懸けなきゃ滅多にないさ。だから、ゆっくり構えて、まあ、好きなら麦とろでも食べて、運の籤の性質をよく見定めなさいというのさ。幸い体がいいからね。根気も続きそうだ」
車が迎えに来て、老妓は出て行った。
柚木はその晩ふらふらと旅に出た。
老妓の意志はかなり判って来た。
それは彼女に出来なかったことを自分にさせようとしているのだ。
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