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武蔵野(3/30) - ブンゴウメール

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(630字。目安の読了時間:2分)

林はまだ夏の緑のそのままでありながら空模様が夏とまったく変わってきて雨雲の南風につれて武蔵野の空低くしきりに雨を送るその晴間には日の光水気を帯びてかなたの林に落ちこなたの杜にかがやく。

自分はしばしば思った、こんな日に武蔵野を大観することができたらいかに美しいことだろうかと。

二日置いて九日の日記にも「風強く秋声野にみつ、浮雲変幻たり」とある。

ちょうどこのころはこんな天気が続いて大空と野との景色が間断なく変化して日の光は夏らしく雲の色風の音は秋らしくきわめて趣味深く自分は感じた。

 まずこれを今の武蔵野の秋の発端として、自分は冬の終わるころまでの日記を左に並べて、変化の大略と光景の要素とを示しておかんと思う。

九月十九日――「朝、空曇り風死す、冷霧寒露、虫声しげし、天地の心なお目さめぬがごとし」

同二十一日――「秋天拭うがごとし、木葉火のごとくかがやく」

十月十九日――「月明らかに林影黒し」

同二十五日――「朝は霧深く、午後は晴る、夜に入りて雲の絶間の月さゆ。朝まだき霧の晴れぬ間に家を出で野を歩み林を訪う」

同二十六日――「午後林を訪う。林の奥に座して四顧し、傾聴し、睇視し、黙想す」

十一月四日――「天高く気澄む、夕暮に独り風吹く野に立てば、天外の富士近く、国境をめぐる連山地平線上に黒し。星光一点、暮色ようやく到り、林影ようやく遠し」

同十八日――「月を蹈んで散歩す、青煙地を這い月光林に砕く」

同十九日――「天晴れ、風清く、露冷やかなり。

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