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武蔵野(30/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(547字。目安の読了時間:2分)

 見たまえ、鍛冶工の前に二頭の駄馬が立っているその黒い影の横のほうで二三人の男が何事をかひそひそと話しあっているのを。

鉄蹄の真赤になったのが鉄砧の上に置かれ、火花が夕闇を破って往来の中ほどまで飛んだ。

話していた人々がどっと何事をか笑った。

月が家並の後ろの高い樫の梢まで昇ると、向う片側の家根が白ろんできた。

 かんてらから黒い油煙が立っている、その間を村の者町の者十数人駈け廻わってわめいている。

いろいろの野菜が彼方此方に積んで並べてある。

これが小さな野菜市、小さな糶売場である。

 日が暮れるとすぐ寝てしまう家があるかと思うと夜の二時ごろまで店の障子に火影を映している家がある。

理髪所の裏が百姓家で、牛のうなる声が往来まで聞こえる、酒屋の隣家が納豆売の老爺の住家で、毎朝早く納豆納豆と嗄声で呼んで都のほうへ向かって出かける。

夏の短夜が間もなく明けると、もう荷車が通りはじめる。

ごろごろがたがた絶え間がない。

九時十時となると、蝉が往来から見える高い梢で鳴きだす、だんだん暑くなる。

砂埃が馬の蹄、車の轍に煽られて虚空に舞い上がる。

蝿の群が往来を横ぎって家から家、馬から馬へ飛んであるく。

 それでも十二時のどんがかすかに聞こえて、どことなく都の空のかなたで汽笛の響がする。

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というわけで、11月は国木田独歩『武蔵野』でした!

ちょっと読みにくかったかもですが、読了お疲れさまでした。

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