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桜の樹の下には(6/7)

(321字。目安の読了時間:1分)

隙間なく水の面を被っている、彼らのかさなりあった翅(はね)が、光にちぢれて油のような光彩を流しているのだ。
そこが、産卵を終わった彼らの墓場だったのだ。
 俺はそれを見たとき、胸が衝かれるような気がした。
墓場を発いて屍体を嗜(この)む変質者のような残忍なよろこびを俺は味わった。
 この溪間ではなにも俺をよろこばすものはない。
鶯(うぐいす)や四十雀も、白い日光をさ青に煙らせている木の若芽も、ただそれだけでは、もうろうとした心象に過ぎない。
俺には惨劇が必要なんだ。
その平衡があって、はじめて俺の心象は明確になって来る。
俺の心は悪鬼のように憂鬱に渇いている。
俺の心に憂鬱が完成するときにばかり、俺の心は和んでくる。

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