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ジャン・クリストフ(5/31)

(535字。目安の読了時間:2分)

ほかの人なら誰だって、まちがえるかも知れなかった。
しかし彼は、はっきりと音色を区別していた。
 ある日、彼は祖父の家で、そりくりかえって腹をつき出し、踵(かかと)で調子をとりながら、部屋の中をぐるぐるまわっていた。
自分で作った歌をやってみながら、気持が悪くなるほどいつまでもまわっていた。
祖父はひげをそっていたが、その手をやすめて、しゃぼんだらけな顔をつき出し、彼の方を眺めていった。
「何を歌ってるんだい。」
 クリストフは知らないと答えた。
「もう一度やってごらん。」と祖父はいった。
 クリストフはやってみた。
だが、どうしてもさっきの節が思い出せなかった。
でも、祖父から注意されてるのに得意になり、自分のいい声をほめてもらおうと思って、オペラのむずかしい節を自己流にうたった。
しかし祖父が聞きたいと思ってるのは、そんなものではなかった。
祖父は口をつぐんで、もうクリストフに取りあわない風をした。
それでもやはり、子供が隣の部屋で遊んでいる間、部屋の戸を半分開放しにしておいた。
 それから数日後のこと、クリストフは自分のまわりに椅子をまるくならべて芝居へいった時のきれぎれな思い出をつなぎあわせて作った音楽劇を演じていた。

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