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ジャン・クリストフ(19/31)

(519字。目安の読了時間:2分)

ゆるやかな単純な幼稚な歌で、重々しい寂しげな、そして少し単調な足どりで、決して急がずに進んでゆく――時々長い間やすんで――それからまた行方もかまわず進み出し、夜のうちに消えていった。
ごく遠いところからやって来るようでもあるし、どこへ行くのかわからなくもあった。
朗かではあるが、なやましいものがこもっていた。
表面は平和だったが、下には長い年月のなやみがひそんでいた。
クリストフはもう息もつかず、身体を動かすことも出来ないで、感動のあまり冷たくなっていた。
歌が終わると、彼はゴットフリートの方へはい寄った。
そして喉をつまらした声でいいかけた。
「小父さん!……」
 ゴットフリートは返事をしなかった。
「小父さん!」とクリストフはくりかえして、両手と顎を彼の膝にのせた。
 ゴットフリートはやさしい声でいった。
「何だい……」
「それ何なの、小父さん。教えてよ。小父さんが歌ったのなあに?」
「知らないね。」
「何だか教えとくれよ。」
「知らないよ。歌だよ。」
「小父さんの歌かい。」
「おれのなもんか、ばかな……古い歌だよ。」
「誰がつくったの?」
「わからないね。」
「いつ出来たの?」

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