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麦藁帽子(11/31)

(563字。目安の読了時間:2分)

それから私は郵便局で、私の母へ宛てて電報を打った。
「ボンボンオクレ」
 そうして私は汗だくになって、決勝点に近づくときの選手の真似をして、死にものぐるいの恰好で、ペダルを踏みながら、村に帰ってきた。
 それから二三日が過ぎた。
或る日のこと、海岸で、私たちは寝そべりながら、順番に、お互を砂の中に埋めっこしていた。
私の番だった。
私は全身を生埋めにされて、やっと、私の顔だけを、砂の中から出していた。
お前がその細部を仕上げていた。
私はお前のするがままになりながら、さっきから、向うの大きな松の木の下に、私たちの方を見ては、笑いながら話し合っている二人の婦人のいるのを、ぼんやり認めていた。
そのうちの海水帽をかぶった方は、お前の母らしかった。
もう一人の方は、この村では、つい見かけたことのない婦人に見えた。
黒いパラソルをさしていた。
「あら、たっちゃんのお母様だわ」お前は、海水着の砂を払いながら、起き上った。
「ふん……」私は気のなさそうな返事をした。
そうして皆が起き上ったのに、私一人だけ、いつまでも砂の中に埋まっていた。
私は心臓をどきどきさせていた。
私の隠し立てが、今にもばれそうなので。
そうしてそれが、砂の中から浮んでいる私の顔を、とても変梃にさせていそうだった。

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