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麦藁帽子(13/31)

(566字。目安の読了時間:2分)

……
「どうして僕のお母さんを知っていたの?」「だってあなたのお母様は運動会のとき何時もいらっしってたじゃないの? そうして私のお母様といつも並んで見ていらしったわ」私はそんなことはまるっきり知らなかった。
何故なら、そんな小学生の時分から、私はみんなの前では、私の母から話しかけられるのさえ、ひどく羞かしがっていたから。
そうして私は私の母から隠れるようにばかりしていたから。
……
 ――そして今もそうだった。
井戸端で、みんなが身体を洗ってしまってからも、私は何時までも、そこに愚図々々していた。
ただ、私の母から隠れていたいばかりに。
……井戸端にしゃがんでいると、私の脊くらい伸びたダリアのおかげで、離れの方からは、こっちがちっとも見えなかった。
それでいて、向うの話し声は手にとるように聞えてくる。
私のボンボンの電報のことが話された。
みんなが、お前までがどっと笑った。
私はてれ臭そうに、耳にはさんでいた巻煙草をふかし出した。
私は何度もその煙に噎(む)せた。
そして、それが私の羞恥を誤魔化した。
 誰かが、私の方に近づいてくる足音がした。
それはお前だった。
「何してんの?……もうお母様がお帰りなさるから、早くいらっしゃいって?」
「こいつを一服したら……」

「まあ!」

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