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麦藁帽子(21/31)

(607字。目安の読了時間:2分)

 或る日曜日、お前たちが讃美歌の練習をしている間、私はお前の兄たちと、その教会の隅っこに隠れながら、バットをめいめい手にして、その村の悪者どもを待伏せていた。
彼等は何も知らずに、何時ものように、白い歯をむき出しながら、お前たちをからかいに来た。
お前の兄たちがだしぬけに窓をあけて、恐ろしい権幕で、彼等を呶鳴りつけた。
私もその真似をした。
……不意打ちをくらった、彼等は、あわてふためきながら、一目散に逃げて行った。
 私はまるで一人で彼等を追い返しでもしたかのように、得意だった。
私はお前からの褒美を欲しがるように、お前の方を振り向いた。
すると、一人の血色の悪い、痩せこけた青年が、お前と並んで、肩と肩とをくっつけるようにして、立っているのを私は認めた。
彼はもの怖じたような目つきで、私たちの方を見ていた。
私はなんだか胸さわぎがしだした。
 私はその青年に紹介された。
私はわざと冷淡を装うて、ちょっと頭を下げたきりだった。
 彼はその村の呉服屋の息子だった。
彼は病気のために中学校を途中で止して、こんな田舎に引籠って、講義録などをたよりに独学していた。
そうして彼よりずっと年下の私に、私の学校の様子などを、何かと聞きたがった。
 その青年がお前の兄たちよりも私に好意を寄せているらしいことは、私はすぐ見てとったが、私の方では、どうも彼があんまり好きになれなかった。

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