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科学の不思議(28/30)

(887字。目安の読了時間:2分)

そして弱いものは其の絶滅の機会を免れようとして、殺されても猶いくらでも生んで行つて、遂にそれに打ち勝つのだ。
ガツガツの大食家共がいくら八方から攻めて来たつて駄目だ。
食はれる方はたつた一匹を保護するために、幾百万もを犠牲にする。
食はれゝば食はれる程沢山産む。
『鯡(にしん)、鱈(たら)、それから鰯(いわし)は、海や、陸や、空の貪食家の為めに、牧場に一ぱいになつてゐる。
これ等の魚が適当な場所に行かうとして、長い航海を試みる時には、其の死滅するのは恐ろしいものだ。
海の中の飢ゑた奴等が此の魚の群れを囲む。
空の飢ゑた奴等は其の泳いで行く路の上を飛びまはる。
陸でもやはりさうした飢ゑた奴等が岸で彼等を待つてゐる。
人間も其の有力な仲間になつて、海の食物の分前を取るのにいそがしい。
人間は大船隊でもつて魚に向つて行つて、それを干物にしたり、塩漬にしたり、燻(いぶ)したりして、荷作りする。
しかしその供給が目に見えて少くなるといふ事はない。
人間の為めには、此の弱い魚は無限の数なのだ。
一匹の鱈が九百万の卵を産むのだ。
何処で貪食家共はさういふ家族の最後を見る事が出来るだらう?』
『九百万の卵!』とエミルが叫びました。
『大変な数ぢやありませんか?』
『それを一つ/\ちやんと勘定するには、毎日十時間も勘定して一年近くもかゝらなければならないだらう。』
『誰か余程辛抱したものがそれを数へられた訳ですね。』
 と云ふのはエミルの批評でした。
『数へるのではない。』とポオル叔父さんは答へました。
『目方を秤(はか)るんだよ。
その方が早いからね。
其の目方から数を推定するのだ。』
『其の海での鱈のやうに、木虱も、薔薇や接骨木の藪で無数の滅亡の機会に自分の体をおいてゐる。
その木虱共は私が話したやうに多勢の食ひしん坊共の毎日のパンなのだ。
そんな風に、木虱共の群がふえるのには、他の昆虫にはない、非常に早い或る方法があるのだ。
木虱は、卵を産むといふ非常にのろいやり方をしないで、生きた木虱其者を産むのだ。

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