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絵のない絵本(49/59)

(757字。目安の読了時間:2分)

 空高く野の白鳥の群れが飛んでいました。その中の一羽は翼の力がおとろえて、だんだん下へ沈んで行きました。その眼はしだいに遠ざかって行く空の旅行隊の後を追っていましたが、翼をひろくひろげて、ちょうどしゃぼん玉が静かな空気の中を沈んで行くように、沈んで行きました。やがて水面に触れました。頭をそらして翼のあいだにつっこむと、おだやかな湖に浮ぶ白い蓮(はす)の花のように、静かに横たわっていました。
 やがて風が吹いてきて、きらきら輝く水のおもてに波をたたせました。すると、水のおもては、まるでエーテルのようにきらめいて、大きな広い波となってうねりました。そのとき、白鳥が頭を上げました。きらきら光る水が、青い火のように白鳥の胸や背を洗って飛び散りました。暁の光が赤い雲を照らしました。白鳥は元気を取り戻して立ち上がると、のぼりくる太陽のほうへ、空の旅行隊の飛び去った青みがかった岸辺をめざして飛んで行きました。ただひとり胸に憧れをいだいて飛んで行きました。青い、ふくれあがる波をこえて、ひとりさびしく飛んで行きました」――
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第二十九夜
「きみにスウェーデンの光景をもう一つ話してあげましょう」と、月が言いました。
「薄暗いもみの木の森のあいだ、ロクセン湖の陰気な岸辺近くに、古いブレタの僧院があります。わたしの光は壁の格子をとおって、広い円天井の部屋へすべりこんで行きました。その部屋では、王たちが大きな石の棺の中でまどろんでいるのです。その棺の上の壁には、この世における栄華をあらわすもののように、一つの王冠が人目をひいています。けれども、それは木でこしらえてあって、それに色彩をほどこし、金めっきをしたものなのです。そしてそれは、壁に打ちこまれた一本の木釘で、しっかりととめられています。

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