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幸福への意志(3/30)

(621字。目安の読了時間:2分)

 僕等はまた――二人とも十六だったと思うが――一緒に踊の稽古にも行って、その結果、共々に初恋を経験した。
 彼を夢中にさせた小娘は、金髪の快活な子で、彼はその子を、年の割にはいちじるしい、僕には時々ほんとに気味悪く思われたほどの、沈鬱な激情であがめていた。
 僕は特に或る舞踏会のことを思い出す。
その少女があるほかの少年に、ほとんど立て続けに、二度もコチリオンを踊ってやりながら、彼には一度も踊ってやらなかった。
僕ははらはらしながら、彼の様子を見ていた。
彼は僕と並んで壁にもたれたまま、じっと自分の塗革靴をにらんでいたが、不意に気を失ってぶったおれてしまった。
家に帰されてから、彼は一週間病床についていた。
その時分――この事件のおりだったと思う――彼の心臓の決して健全でないことがわかったのである。
 すでにこの時以前、彼は画を描くことをはじめていて、そのほうでは並々ならぬ才能を発揮していた。
木炭の走り描きで、あの少女の風貌が如実に現わしてあって、下に「なれは花にも似たるかな――パオロ・ホフマン作之」と書いてある一枚を、僕はまだ蔵している。
 いつのことだったか、はっきり覚えていないが、ともかく僕等がかなり上級にいた頃、彼の両親は町を去って、カルルスルウエに住みついた。
老ホフマンはそこにいろんなつづき合いを持っていたのである。
パオロは学校を換えないことになって、ある老教授のところに預けられた。

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