ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」のブログです

二銭銅貨(20/30)

(645字。目安の読了時間:2分)

そこで、彼奴には、あの金を保管させる所の、手下乃至は相棒といった様なものがあるに相違ない。今仮にだ、彼奴が不意の捕縛の為に、五万円の隠し場所を相棒に知らせる暇がなかったとしたらどうだ。彼奴としては、未決監に居る間に、何かの方法でその仲間に通信する外はないのだ。このえたいの知れない紙切が、若しもその通信文であったら……
 こういう考が俺の頭に閃いたんだ。無論空想さ。だが一寸甘い空想だからね。そこで、君に二銭銅貨の出所についてあんな質問をした訳だ。ところが君は、煙草屋の娘が監獄の差入屋へ嫁いているというではないか。未決監に居る泥坊が外部と通信しようとすれば、差入屋を媒介者にするのが最も容易だ。そして、若しその目論見が何かの都合で手違いになったとしたら、その通信は差入屋の手に残っている筈だ。それが、その家の女房によって親類の家に運ばれないと、どうして云えよう。さあ、俺は夢中になって了った。
 さて、若しこの紙切の無意味な文字が一つの暗号文であるとしたら、それを解くキイは何だろう。俺はこの部屋の中を歩き廻って考えた。可也難しい、全部拾って見ても、南無阿弥陀仏の六字と読点だけしかない。この七つの記号を以て、どういう文句が綴れるだろう。
 俺は暗号文については、以前に一寸研究したことがあるんだ。シャーロック・ホームズじゃないが、百六十種位の暗号の書き方は俺だって知っているんだ。(Dancing Men 参照)
 で、俺は、俺の知っている限りの暗号記法を、一つ一つ頭に浮べて見た。

=========================
ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! 
https://bit.ly/2Twaeh9

Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv
■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com
青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56647_58167.html
■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail
■月末まで一時的に配信を停止: https://bungomail.com/unsubscribe

-------
配信元: ブンゴウメール編集部
NOT SO BAD, LLC.
Web: https://bungomail.com
配信停止:https://bungomail.com/unsubscribe