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一房の葡萄(4/15)

(470字。目安の読了時間:1分)

僕はいやな気持ちになりました。
けれどもジムが僕を疑っているように見えれば見えるほど、僕はその絵具がほしくてならなくなるのです。

 僕はかわいい顔はしていたかも知れないが体も心も弱い子でした。
その上臆病者で、言いたいことも言わずにすますような質でした。
だからあんまり人からは、かわいがられなかったし、友達もない方でした。
昼御飯がすむと他の子供達は活溌に運動場に出て走りまわって遊びはじめましたが、僕だけはなおさらその日は変に心が沈んで、一人だけ教場に這入っていました。
そとが明るいだけに教場の中は暗くなって僕の心の中のようでした。
自分の席に坐(すわ)っていながら僕の眼は時々ジムの卓の方に走りました。
ナイフで色々ないたずら書きが彫りつけてあって、手垢で真黒になっているあの蓋を揚げると、その中に本や雑記帳や石板と一緒になって、飴(あめ)のような木の色の絵具箱があるんだ。
そしてその箱の中には小さい墨のような形をした藍や洋紅の絵具が……僕は顔が赤くなったような気がして、思わずそっぽを向いてしまうのです。

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