ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」のブログです

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (2/11)

(709字。目安の読了時間:2分)

 その人魚は女でありました。

そして妊娠でありました。

私達は、もう長い間、この淋しい、話をするものもない、北の青い海の中で暮らして来たのだから、もはや、明るい、賑(にぎや)かな国は望まないけれど、これから産れる子供に、こんな悲しい、頼りない思いをせめてもさせたくないものだ。

 子供から別れて、独りさびしく海の中に暮らすということは、この上もない悲しいことだけれど、子供が何処にいても、仕合せに暮らしてくれたなら、私の喜びは、それにましたことはない。

 人間は、この世界の中で一番やさしいものだと聞いている。

そして可哀そうな者や頼りない者は決していじめたり、苦しめたりすることはないと聞いている。

一旦手附けたなら、決して、それを捨てないとも聞いている。

幸い、私達は、みんなよく顔が人間に似ているばかりでなく、胴から上は全部人間そのままなのであるから――魚や獣物の世界でさえ、暮らされるところを見れば――その世界で暮らされないことはない。

一度、人間が手に取り上げて育ててくれたら、決して無慈悲に捨てることもあるまいと思われる。

 人魚は、そう思ったのでありました。

 せめて、自分の子供だけは、賑やかな、明るい、美しい町で育てて大きくしたいという情から、女の人魚は、子供を陸の上に産み落そうとしたのであります。

そうすれば、自分は、もう二たび我子の顔を見ることは出来ないが、子供は人間の仲間入りをして、幸福に生活をするであろうと思ったからであります。

 遥か、彼方には、海岸の小高い山にある神社の燈火がちらちらと波間に見えていました。

==============================================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=9b747ad72d&e=c06520986f

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv

■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp

■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404

■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/54372_46225.html

■運営へのご支援はこちら: https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=21b27ad28c&e=c06520986f

メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03

(これより下部のメッセージはすべてシステムによって自動付与されたもので、現在機能しておりません。必ず上記のURLからご解約ください)

==============================================

Unsubscribe .6fnhsbevhylj4@blog.hatena.ne.jp from this list:

https://notsobad.us11.list-manage.com/unsubscribe?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=bc4d3c9b63&e=c06520986f&c=f599a29fcf

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (1/11)

(664字。目安の読了時間:2分)

 人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。

北の海にも棲んでいたのであります。

 北方の海の色は、青うございました。

ある時、岩の上に、女の人魚があがって、あたりの景色を眺めながら休んでいました。

 雲間から洩(も)れた月の光がさびしく、波の上を照していました。

どちらを見ても限りない、物凄い波がうねうねと動いているのであります。

 なんという淋しい景色だろうと人魚は思いました。

自分達は、人間とあまり姿は変っていない。

魚や、また底深い海の中に棲んでいる気の荒い、いろいろな獣物等とくらべたら、どれ程人間の方に心も姿も似ているか知れない。

それだのに、自分達は、やはり魚や、獣物等といっしょに、冷たい、暗い、気の滅入りそうな海の中に暮らさなければならないというのはどうしたことだろうと思いました。

 長い年月の間、話をする相手もなく、いつも明るい海の面を憧がれて暮らして来たことを思いますと、人魚はたまらなかったのであります。

そして、月の明るく照す晩に、海の面に浮んで岩の上に休んでいろいろな空想に耽(ふけ)るのが常でありました。

「人間の住んでいる町は、美しいということだ。人間は、魚よりもまた獣物よりも人情があってやさしいと聞いている。私達は、魚や獣物の中に住んでいるが、もっと人間の方に近いのだから、人間の中に入って暮されないことはないだろう」と、人魚は考えたのであります。

 その人魚は女でありました。

==============================================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=d3344f6b07&e=c06520986f

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv

■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp

■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404

■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/54372_46225.html

■運営へのご支援はこちら: https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=d5b7094166&e=c06520986f

メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03

(これより下部のメッセージはすべてシステムによって自動付与されたもので、現在機能しておりません。必ず上記のURLからご解約ください)

==============================================

Unsubscribe .6fnhsbevhylj4@blog.hatena.ne.jp from this list:

https://notsobad.us11.list-manage.com/unsubscribe?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=bc4d3c9b63&e=c06520986f&c=1afde5cd2b

【ブンゴウメール】野ばら (10/10)

(259字。目安の読了時間:1分)

かなたから、おおぜいの人のくるけはいがしました。

見ると、一列の軍隊でありました。

そして馬に乗ってそれを指揮するのは、かの青年でありました。

その軍隊はきわめて静粛で声ひとつたてません。

やがて老人の前を通るときに、青年は黙礼をして、ばらの花をかいだのでありました。

 老人は、なにかものをいおうとすると目がさめました。

それはまったく夢であったのです。

それから一月ばかりしますと、野ばらが枯れてしまいました。

その年の秋、老人は南の方へ暇をもらって帰りました。

==============================================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=74af487ab4&e=c06520986f

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv

■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp

■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404

■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51034_47932.html

■運営へのご支援はこちら: https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=b825f23eec&e=c06520986f

メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03

(これより下部のメッセージはすべてシステムによって自動付与されたもので、現在機能しておりません。必ず上記のURLからご解約ください)

==============================================

Unsubscribe .6fnhsbevhylj4@blog.hatena.ne.jp from this list:

https://notsobad.us11.list-manage.com/unsubscribe?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=bc4d3c9b63&e=c06520986f&c=38cc1645d2

【ブンゴウメール】野ばら (9/10)

(338字。目安の読了時間:1分)

いま戦争は、ずっと遠くでしているので、たとえ耳を澄ましても、空をながめても、鉄砲の音も聞こえなければ、黒い煙の影すら見られなかったのであります。

老人はその日から、青年の身の上を案じていました。

日はこうしてたちました。

 ある日のこと、そこを旅人が通りました。

老人は戦争について、どうなったかとたずねました。

すると、旅人は、小さな国が負けて、その国の兵士はみなごろしになって、戦争は終わったということを告げました。

 老人は、そんなら青年も死んだのではないかと思いました。

そんなことを気にかけながら石碑の礎に腰をかけて、うつむいていますと、いつか知らず、うとうとと居眠りをしました。

かなたから、おおぜいの人のくるけはいがしました。

==============================================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=f9ebba1338&e=c06520986f

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv

■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp

■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404

■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51034_47932.html

■運営へのご支援はこちら: https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=43cc3a4447&e=c06520986f

メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03

(これより下部のメッセージはすべてシステムによって自動付与されたもので、現在機能しておりません。必ず上記のURLからご解約ください)

==============================================

Unsubscribe .6fnhsbevhylj4@blog.hatena.ne.jp from this list:

https://notsobad.us11.list-manage.com/unsubscribe?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=bc4d3c9b63&e=c06520986f&c=2f02dbb172

【ブンゴウメール】野ばら (8/10)

(308字。目安の読了時間:1分)

 これを聞くと、青年は、あきれた顔をして、

「なにをいわれますか。どうして私とあなたとが敵どうしでしょう。私の敵は、ほかになければなりません。戦争はずっと北の方で開かれています。私は、そこへいって戦います。」と、青年はいい残して、去ってしまいました。

 国境には、ただ一人老人だけが残されました。

青年のいなくなった日から、老人は、茫然として日を送りました。

野ばらの花が咲いて、みつばちは、日が上がると、暮れるころまで群がっています。

いま戦争は、ずっと遠くでしているので、たとえ耳を澄ましても、空をながめても、鉄砲の音も聞こえなければ、黒い煙の影すら見られなかったのであります。

==============================================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=f09ed9f1e6&e=c06520986f

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv

■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp

■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404

■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51034_47932.html

■運営へのご支援はこちら: https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=9db32a878b&e=c06520986f

メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03

(これより下部のメッセージはすべてシステムによって自動付与されたもので、現在機能しておりません。必ず上記のURLからご解約ください)

==============================================

Unsubscribe .6fnhsbevhylj4@blog.hatena.ne.jp from this list:

https://notsobad.us11.list-manage.com/unsubscribe?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=bc4d3c9b63&e=c06520986f&c=e44a78becb

【ブンゴウメール】野ばら (7/10)

(277字。目安の読了時間:1分)

 やがて冬が去って、また春となりました。

ちょうどそのころ、この二つの国は、なにかの利益問題から、戦争を始めました。

そうしますと、これまで毎日、仲むつまじく、暮らしていた二人は、敵、味方の間柄になったのです。

それがいかにも、不思議なことに思われました。

「さあ、おまえさんと私は今日から敵どうしになったのだ。私はこんなに老いぼれていても少佐だから、私の首を持ってゆけば、あなたは出世ができる。だから殺してください。」と、老人はいいました。

 これを聞くと、青年は、あきれた顔をして、

「なにをいわれますか。

==============================================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=90074ef5cd&e=c06520986f

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv

■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp

■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404

■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51034_47932.html

■運営へのご支援はこちら: https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=bee075c7e3&e=c06520986f

メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03

(これより下部のメッセージはすべてシステムによって自動付与されたもので、現在機能しておりません。必ず上記のURLからご解約ください)

==============================================

Unsubscribe .6fnhsbevhylj4@blog.hatena.ne.jp from this list:

https://notsobad.us11.list-manage.com/unsubscribe?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=bc4d3c9b63&e=c06520986f&c=745888abab

【ブンゴウメール】野ばら (7/10)

(277字。目安の読了時間:1分)

 やがて冬が去って、また春となりました。

ちょうどそのころ、この二つの国は、なにかの利益問題から、戦争を始めました。

そうしますと、これまで毎日、仲むつまじく、暮らしていた二人は、敵、味方の間柄になったのです。

それがいかにも、不思議なことに思われました。

「さあ、おまえさんと私は今日から敵どうしになったのだ。私はこんなに老いぼれていても少佐だから、私の首を持ってゆけば、あなたは出世ができる。だから殺してください。」と、老人はいいました。

 これを聞くと、青年は、あきれた顔をして、

「なにをいわれますか。

==============================================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=66154fec8f&e=c06520986f

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv

■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp

■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404

■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51034_47932.html

■運営へのご支援はこちら: https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=9a3cc3afa9&e=c06520986f

メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03

(これより下部のメッセージはすべてシステムによって自動付与されたもので、現在機能しておりません。必ず上記のURLからご解約ください)

==============================================

Unsubscribe .6fnhsbevhylj4@blog.hatena.ne.jp from this list:

https://notsobad.us11.list-manage.com/unsubscribe?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=bc4d3c9b63&e=c06520986f&c=3f59f53f39