ブンゴウメール公式ブログ

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【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (3/11)

(704字。目安の読了時間:2分) 遥か、彼方には、海岸の小高い山にある神社の燈火がちらちらと波間に見えていました。 ある夜、女の人魚は、子供を産み落すために冷たい暗い波の間を泳いで、陸の方に向って近づいて来ました。 二 海岸に小さな町がありまし…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (3/11)

(704字。目安の読了時間:2分) 遥か、彼方には、海岸の小高い山にある神社の燈火がちらちらと波間に見えていました。 ある夜、女の人魚は、子供を産み落すために冷たい暗い波の間を泳いで、陸の方に向って近づいて来ました。 二 海岸に小さな町がありまし…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (2/11)

(709字。目安の読了時間:2分) その人魚は女でありました。 そして妊娠でありました。 私達は、もう長い間、この淋しい、話をするものもない、北の青い海の中で暮らして来たのだから、もはや、明るい、賑(にぎや)かな国は望まないけれど、これから産れる…

【ブンゴウメール】赤い蝋燭と人魚 (1/11)

(664字。目安の読了時間:2分) 一 人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。 北の海にも棲んでいたのであります。 北方の海の色は、青うございました。 ある時、岩の上に、女の人魚があがって、あたりの景色を眺めながら休んでいました。 …

【ブンゴウメール】野ばら (10/10)

(259字。目安の読了時間:1分) かなたから、おおぜいの人のくるけはいがしました。 見ると、一列の軍隊でありました。 そして馬に乗ってそれを指揮するのは、かの青年でありました。 その軍隊はきわめて静粛で声ひとつたてません。 やがて老人の前を通ると…

【ブンゴウメール】野ばら (9/10)

(338字。目安の読了時間:1分) いま戦争は、ずっと遠くでしているので、たとえ耳を澄ましても、空をながめても、鉄砲の音も聞こえなければ、黒い煙の影すら見られなかったのであります。 老人はその日から、青年の身の上を案じていました。 日はこうしてた…

【ブンゴウメール】野ばら (8/10)

(308字。目安の読了時間:1分) これを聞くと、青年は、あきれた顔をして、 「なにをいわれますか。どうして私とあなたとが敵どうしでしょう。私の敵は、ほかになければなりません。戦争はずっと北の方で開かれています。私は、そこへいって戦います。」と…

【ブンゴウメール】野ばら (7/10)

(277字。目安の読了時間:1分) やがて冬が去って、また春となりました。 ちょうどそのころ、この二つの国は、なにかの利益問題から、戦争を始めました。 そうしますと、これまで毎日、仲むつまじく、暮らしていた二人は、敵、味方の間柄になったのです。 …

【ブンゴウメール】野ばら (7/10)

(277字。目安の読了時間:1分) やがて冬が去って、また春となりました。 ちょうどそのころ、この二つの国は、なにかの利益問題から、戦争を始めました。 そうしますと、これまで毎日、仲むつまじく、暮らしていた二人は、敵、味方の間柄になったのです。 …

【ブンゴウメール】野ばら (6/10)

(284字。目安の読了時間:1分) 白いばらの花からは、よい香りを送ってきました。 冬は、やはりその国にもあったのです。 寒くなると老人は、南の方を恋しがりました。 その方には、せがれや、孫が住んでいました。 「早く、暇をもらって帰りたいものだ。」…

【ブンゴウメール】野ばら (5/10)

(270字。目安の読了時間:1分) 二人とも正直で、しんせつでありました。 二人はいっしょうけんめいで、将棋盤の上で争っても、心は打ち解けていました。 「やあ、これは俺の負けかいな。こう逃げつづけでは苦しくてかなわない。ほんとうの戦争だったら、ど…

【ブンゴウメール】野ばら (4/10)

(300字。目安の読了時間:1分) 二人は、そこでこんな立ち話をしました。 たがいに、頭を上げて、あたりの景色をながめました。 毎日見ている景色でも、新しい感じを見る度に心に与えるものです。 青年は最初将棋の歩み方を知りませんでした。 けれど老人に…

【ブンゴウメール】野ばら (3/10)

(268字。目安の読了時間:1分) その快い羽音が、まだ二人の眠っているうちから、夢心地に耳に聞こえました。 「どれ、もう起きようか。あんなにみつばちがきている。」と、二人は申し合わせたように起きました。 そして外へ出ると、はたして、太陽は木のこ…

【ブンゴウメール】野ばら (2/10)

(310字。目安の読了時間:1分) そして、まれにしかその辺を旅する人影は見られなかったのです。 初め、たがいに顔を知り合わない間は、二人は敵か味方かというような感じがして、ろくろくものもいいませんでしたけれど、いつしか二人は仲よしになってしま…

【ブンゴウメール】野ばら (1/10)

(264字。目安の読了時間:1分) 大きな国と、それよりはすこし小さな国とが隣り合っていました。 当座、その二つの国の間には、なにごとも起こらず平和でありました。 ここは都から遠い、国境であります。 そこには両方の国から、ただ一人ずつの兵隊が派遣…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (10/10)

(418字。目安の読了時間:1分) そして、おばあさんは先に立って、戸口から出て裏の花園の方へとまわりました。 少女は黙って、おばあさんの後についてゆきました。 花園には、いろいろの花が、いまを盛りと咲いていました。 昼間は、そこに、ちょうや、み…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (9/10)

(437字。目安の読了時間:1分) と、おばあさんは、口のうちでいいましたが、目がかすんで、どこから血が出るのかよくわかりませんでした。 「さっきの眼鏡はどこへいった。」と、おばあさんは、たなの上を探しました。 眼鏡は、目ざまし時計のそばにあった…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (8/10)

(452字。目安の読了時間:1分) それでつい、戸をたたく気になったのであります。」と、髪の毛の長い、美しい少女はいいました。 おばあさんは、いい香水の匂いが、少女の体にしみているとみえて、こうして話している間に、ぷんぷんと鼻にくるのを感じまし…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (7/10)

(460字。目安の読了時間:1分) 小さな手でたたくと見えて、トン、トンというかわいらしい音がしていたのであります。 「こんなにおそくなってから……。」と、おばあさんは口のうちでいいながら戸を開けてみました。 するとそこには、十二、三の美しい女の子…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (6/10)

(424字。目安の読了時間:1分) おばあさんは、眼鏡をかけたり、はずしたりしました。 ちょうど子供のように珍しくて、いろいろにしてみたかったのと、もう一つは、ふだんかけつけないのに、急に眼鏡をかけて、ようすが変わったからでありました。 おばあさ…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (5/10)

(482字。目安の読了時間:1分) 窓の下の男が立っている足もとの地面には、白や、紅や、青や、いろいろの草花が、月の光を受けてくろずんで咲いて、香っていました。 おばあさんは、この眼鏡をかけてみました。 そして、あちらの目ざまし時計の数字や、暦の…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (4/10)

(409字。目安の読了時間:1分) いろいろな眼鏡をたくさん持っています。この町へは、はじめてですが、じつに気持ちのいいきれいな町です。今夜は月がいいから、こうして売って歩くのです。」と、その男はいいました。 おばあさんは、目がかすんでよく針の…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (3/10)

(440字。目安の読了時間:1分) おばあさんは、いつもに似ず、それをききつけました。 「おばあさん、おばあさん。」と、だれか呼ぶのであります。 おばあさんは、最初は、自分の耳のせいでないかと思いました。 そして、手を動かすのをやめていました。 「…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (2/10)

(424字。目安の読了時間:1分) 目ざまし時計の音が、カタ、コト、カタ、コトとたなの上で刻んでいる音がするばかりで、あたりはしんと静まっていました。 ときどき町の人通りのたくさんな、にぎやかな巷(ちまた)の方から、なにか物売りの声や、また、汽…

【ブンゴウメール】月夜と眼鏡 (1/10)

(461字。目安の読了時間:1分) 町も、野も、いたるところ、緑の葉に包まれているころでありました。 おだやかな、月のいい晩のことであります。 静かな町のはずれにおばあさんは住んでいましたが、おばあさんは、ただ一人、窓の下にすわって、針仕事をして…

【ブンゴウメール】大つごもり (31/31)

(338字。目安の読了時間:1分) 伯父様同腹で無きだけを何処までも陳べて、聞かれずば甲斐なしその場で舌かみ切つて死んだなら、命にかへて嘘(うそ)とは思しめすまじ、それほど度胸すわれど奥の間へ行く心は屠処の羊なり。 …………………………………………………… お峯が引…

【ブンゴウメール】大つごもり (30/31)

(353字。目安の読了時間:1分) 我が罪は覚悟の上なれど物がたき伯父様にまで濡(ぬ)れ衣を着せて、干されぬは貧乏のならひ、かかる事もする物と人の言ひはせぬか、悲しや何としたらよかろ、伯父様に疵(きず)のつかぬやう、我身が頓死する法は無きかと目…

【ブンゴウメール】大つごもり (29/31)

(344字。目安の読了時間:1分) 持つまじきは放蕩を仕立る継母ぞかし。 塩花こそふらね跡は一まづ掃き出して、若旦那退散のよろこび、金は惜しけれど見る目も憎ければ家に居らぬは上々なり、どうすればあのやうに図太くなられるか、あの子を生んだ母さんの…

【ブンゴウメール】大つごもり (28/31)

(351字。目安の読了時間:1分) 親兄弟に恥を見するな、貴様にいふとも甲斐は無けれど尋常ならば山村の若旦那とて、入らぬ世間に悪評もうけず、我が代りの年礼に少しの労をも助くる筈を、六十に近き親に泣きを見するは罰あたりで無きか、子供の時には本の少…

【ブンゴウメール】大つごもり (27/31)

(335字。目安の読了時間:1分) 我れは詮方なけれどお名前に申わけなしなどと、つまりは此金の欲しと聞えぬ。 母は大方かかる事と今朝よりの懸念うたがひなく、幾金とねだるか、ぬるき旦那どのの処置はがゆしと思へど、我れも口にては勝がたき石之助の弁に…