ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」のブログです

【ブンゴウメール】文字禍 (13/15)

(509字。目安の読了時間:2分) 文字に親しみ過ぎてかえって文字に疑を抱くことは、決して矛盾ではない。 先日博士は生来の健啖に任せて羊の炙肉をほとんど一頭分も平らげたが、その後当分、生きた羊の顔を見るのも厭になったことがある。 青年歴史家が帰っ…

【ブンゴウメール】文字禍 (12/15)

(519字。目安の読了時間:2分) 太古以来のアヌ・エンリルの書に書上げられていない星は、なにゆえに存在せぬか? それは、彼等がアヌ・エンリルの書に文字として載せられなかったからじゃ。 大マルズック星(木星)が天界の牧羊者(オリオン)の境を犯せば…

【ブンゴウメール】文字禍 (12/15)

(519字。目安の読了時間:2分) 太古以来のアヌ・エンリルの書に書上げられていない星は、なにゆえに存在せぬか? それは、彼等がアヌ・エンリルの書に文字として載せられなかったからじゃ。 大マルズック星(木星)が天界の牧羊者(オリオン)の境を犯せば…

【ブンゴウメール】文字禍 (11/15)

(521字。目安の読了時間:2分) 博士はそれを感じたが、はっきり口で言えないので、次のように答えた。 歴史とは、昔在った事柄で、かつ粘土板に誌されたものである。 この二つは同じことではないか。 書洩らしは? と歴史家が聞く。 書洩らし? 冗談ではな…

【ブンゴウメール】文字禍 (11/15)

(521字。目安の読了時間:2分) 博士はそれを感じたが、はっきり口で言えないので、次のように答えた。 歴史とは、昔在った事柄で、かつ粘土板に誌されたものである。 この二つは同じことではないか。 書洩らしは? と歴史家が聞く。 書洩らし? 冗談ではな…

【ブンゴウメール】文字禍 (10/15)

(508字。目安の読了時間:2分) 老博士が呆(あき)れた顔をしているのを見て、若い歴史家は説明を加えた。 先頃のバビロン王シャマシュ・シュム・ウキンの最期について色々な説がある。 自ら火に投じたことだけは確かだが、最後の一月ほどの間、絶望の余り…

【ブンゴウメール】文字禍 (10/15)

(508字。目安の読了時間:2分) 老博士が呆(あき)れた顔をしているのを見て、若い歴史家は説明を加えた。 先頃のバビロン王シャマシュ・シュム・ウキンの最期について色々な説がある。 自ら火に投じたことだけは確かだが、最後の一月ほどの間、絶望の余り…

【ブンゴウメール】文字禍 (8/15)

(539字。目安の読了時間:2分) 読み、諳んじ、愛撫するだけではあきたらず、それを愛するの余りに、彼は、ギルガメシュ伝説の最古版の粘土板を噛砕き、水に溶かして飲んでしまったことがある。 文字の精は彼の眼を容赦なく喰い荒し、彼は、ひどい近眼であ…

【ブンゴウメール】文字禍 (9/15)

(532字。目安の読了時間:2分) 侍医のアラッド・ナナは、この病軽からずと見て、大王のご衣裳を借り、自らこれをまとうて、アッシリヤ王に扮(ふん)した。 これによって、死神エレシュキガルの眼を欺き、病を大王から己の身に転じようというのである。 こ…

【ブンゴウメール】文字禍 (9/15)

(532字。目安の読了時間:2分) 侍医のアラッド・ナナは、この病軽からずと見て、大王のご衣裳を借り、自らこれをまとうて、アッシリヤ王に扮(ふん)した。 これによって、死神エレシュキガルの眼を欺き、病を大王から己の身に転じようというのである。 こ…

【ブンゴウメール】文字禍 (8/15)

(539字。目安の読了時間:2分) 読み、諳んじ、愛撫するだけではあきたらず、それを愛するの余りに、彼は、ギルガメシュ伝説の最古版の粘土板を噛砕き、水に溶かして飲んでしまったことがある。 文字の精は彼の眼を容赦なく喰い荒し、彼は、ひどい近眼であ…

【ブンゴウメール】文字禍 (6/15)

(501字。目安の読了時間:2分) これは統計の明らかに示す所である。 文字に親しむようになってから、女を抱いても一向楽しゅうなくなったという訴えもあった。 もっとも、こう言出したのは、七十歳を越した老人であるから、これは文字のせいではないかも知…

【ブンゴウメール】文字禍 (7/15)

(501字。目安の読了時間:2分) 乗物が発明されて、人間の脚が弱く醜くなった。 文字が普及して、人々の頭は、もはや、働かなくなったのである。 ナブ・アヘ・エリバは、ある書物狂の老人を知っている。 その老人は、博学なナブ・アヘ・エリバよりも更に博…

【ブンゴウメール】文字禍 (7/15)

(501字。目安の読了時間:2分) 乗物が発明されて、人間の脚が弱く醜くなった。 文字が普及して、人々の頭は、もはや、働かなくなったのである。 ナブ・アヘ・エリバは、ある書物狂の老人を知っている。 その老人は、博学なナブ・アヘ・エリバよりも更に博…

【ブンゴウメール】文字禍 (4/15)

(513字。目安の読了時間:2分) 彼は眼から鱗の落ちた思がした。 単なるバラバラの線に、一定の音と一定の意味とを有たせるものは、何か? ここまで思い到った時、老博士は躊躇なく、文字の霊の存在を認めた。 魂によって統べられない手・脚・頭・爪・腹等…

【ブンゴウメール】文字禍 (5/15)

(552字。目安の読了時間:2分) それによれば、文字を覚えてから急に蝨(しらみ)を捕るのが下手になった者、眼に埃(ほこり)が余計はいるようになった者、今まで良く見えた空の鷲(わし)の姿が見えなくなった者、空の色が以前ほど碧(あお)くなくなった…

【ブンゴウメール】文字禍 (6/15)

(501字。目安の読了時間:2分) これは統計の明らかに示す所である。 文字に親しむようになってから、女を抱いても一向楽しゅうなくなったという訴えもあった。 もっとも、こう言出したのは、七十歳を越した老人であるから、これは文字のせいではないかも知…

【ブンゴウメール】文字禍 (5/15)

(552字。目安の読了時間:2分) それによれば、文字を覚えてから急に蝨(しらみ)を捕るのが下手になった者、眼に埃(ほこり)が余計はいるようになった者、今まで良く見えた空の鷲(わし)の姿が見えなくなった者、空の色が以前ほど碧(あお)くなくなった…

【ブンゴウメール】文字禍 (2/15)

(533字。目安の読了時間:2分) 千に余るバビロンの俘囚はことごとく舌を抜いて殺され、その舌を集めたところ、小さな築山が出来たのは、誰知らぬ者のない事実である。 舌の無い死霊に、しゃべれる訳がない。 星占や羊肝卜で空しく探索した後、これはどうし…

【ブンゴウメール】文字禍 (4/15)

(513字。目安の読了時間:2分) 彼は眼から鱗の落ちた思がした。 単なるバラバラの線に、一定の音と一定の意味とを有たせるものは、何か? ここまで思い到った時、老博士は躊躇なく、文字の霊の存在を認めた。 魂によって統べられない手・脚・頭・爪・腹等…

【ブンゴウメール】文字禍 (3/15)

(532字。目安の読了時間:2分) 老博士の卓子(テーブル)(その脚には、本物の獅子の足が、爪さえそのままに使われている)の上には、毎日、累々たる瓦の山がうずたかく積まれた。 それら重量ある古知識の中から、彼は、文字の霊についての説を見出そうと…

【ブンゴウメール】文字禍 (1/15)

(495字。目安の読了時間:1分) 文字の霊などというものが、一体、あるものか、どうか。 アッシリヤ人は無数の精霊を知っている。 夜、闇の中を跳梁するリル、その雌のリリツ、疫病をふり撒(ま)くナムタル、死者の霊エティンム、誘拐者ラバス等、数知れぬ…

【ブンゴウメール】断食芸人 (31/31)

(389字。目安の読了時間:1分) あんなに長いこと荒れ果てていた檻のなかにこの野獣が跳び廻っているのをながめることは、どんなに鈍感な人間にとってもはっきり感じられる気ばらしであった。 豹には何一つ不自由なものはなかった。 豹がうまいと思う食べも…

【ブンゴウメール】断食芸人 (29/31)

(472字。目安の読了時間:1分) 耳を格子にあてていた監督だけが、芸人のいうことがわかった。 「いいとも」と、監督はいって、指を額に当て、それによって断食芸人の状態を係員たちにほのめかした。 少し頭にきている、というしぐさだ。 「許してやるとも…

【ブンゴウメール】断食芸人 (30/31)

(414字。目安の読了時間:1分) 「それはな、おれが」と、断食芸人はいって、小さな頭を少しばかりもたげ、まるで接吻するように唇をとがらして、ひとことでももれてしまわないように監督のすぐ耳もとでささやいた。 「うまいと思う食べものを見つけること…

【ブンゴウメール】断食芸人 (28/31)

(412字。目安の読了時間:1分) というのは、断食芸人はあざむいたりせず、正直に働いていたのだが、世間のほうが彼をあざむいて彼の当然もらうべき報酬を奪ってしまったのだった。 だが、それからふたたび多くの日々が流れ過ぎて、それもついに終りになっ…

【ブンゴウメール】桜の森の満開の下

【3/30】(715字。目安の読了時間:2分) けれども山賊は落付いた男で、後悔ということを知らない男ですから、これはおかしいと考えたのです。 ひとつ、来年、考えてやろう。 そう思いました。 今年は考える気がしなかったのです。 そして、来年、花がさいた…

【ブンゴウメール】桜の森の満開の下

【2/30】(680字。目安の読了時間:2分) なぜなら人間の足の早さは各人各様で、一人が遅れますから、オイ待ってくれ、後から必死に叫んでも、みんな気違いで、友達をすてて走ります。 それで鈴鹿峠の桜の森の花の下を通過したとたんに今迄仲のよかった旅人…

【ブンゴウメール】桜の森の満開の下

【1/30】(666字。目安の読了時間:2分) 桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になりますが、これは嘘です。 なぜ嘘かと申しますと、桜の花の下へ人がより集って酔っ払ってゲロを吐いて喧…

【ブンゴウメール】断食芸人 (27/31)

(445字。目安の読了時間:1分) やりとげた断食日数を示す数字を書いた小さな黒板は、最初のうちは念入りに毎日書きあらためられていたのだったが、もうずっと前からいつでも同じものになっていた。 というのは、最初の一週間が過ぎると係員自身がこのつま…